02
海軍の一般兵らしいその人に着いていくまま、私は放心していた。自分の体だ、自分が一番よく分かってはいるが、夢なんかじゃないんだ。妙にリアルすぎる感覚に、先程足を切って、痛覚を伴ったそれに、理解させられたと言った方がいいかもしれない。
海兵の人は私が裸足だったことにギョッと驚き、簡易的なサンダルを買ってきてくれた。私も気付くのに遅れてしまったが、寝る前に着ていたパジャマでここにいたのだ。
足も靴なんか履いているはずもなく、怪我をしてしまった訳だが。
ただ私の中に渦巻くのは、何故?ということ。願ったわけでもなく、ONE PIECEをそこまで知っているわけでもなく、世界を変えたいと思ったわけでもなく。
何故、今、こんなところにいるのか。
脳裏に浮かぶのは、トレードマークの麦わら帽子と、赤いシャツ。そして、その仲間達。
原作を読んでいたから話の流れは覚えている。だが俗に言うこの'トリップ'現象をしたところで、私には何も出来ない。
「君はどこから来たの?」
「・・・ぁ・・・・・・」
声が掠れて思うように話せない。余程ショックだったのかもしれない。だがそれに何を勘違いしたのか、海兵さんは目を見開くと紙とペンを寄越してくれた。
え、話せないと思われている?
まぁ変なことを口走らなくて済みそうだと思い、それを受け取ったが、日本語通じるの?この世界。
私は悩んだが、とりあえず書いてみた。
「(どこから来たのか、覚えていなくて。いつの間にかあの島にいました)」
「そうなのか・・・記憶喪失か?それとも・・・」
海兵さんは悲しそうな顔をするとぶつぶつと一人考え込んでいた。どうやら通じたらしい。思わぬトリップ特典に一先ず安心した。言葉が通じるというものは、かなり喜ばしいことだ。
「まずは、上の人に連絡をとってみるから待っててね」
安心させるようなその笑みに私はほっとした。海軍にあまりいい印象を持っていなかったが、やはり海軍というのは日本で言う警察なのだ。市民を守る為、正義を貫く為、その人達は存在している。
私の出会ったその海兵さんの優しい雰囲気に少し落ち着きを取り戻した。
「君は、名前はなんていうの?」
「(・・・・・・ナマエです。)」
苗字を言うか迷ったが、ここには似つかわしくない日本人らしい苗字だから、名前だけを伝える。
「ナマエちゃんね、僕は――」
海兵さんの名前を聞ける!と思った時、大きな爆発音が聞こえた。耳を劈くようなそれに、非日常を知らない私は震えた。
「海賊だあああ!!」
誰かの大きな叫び声と共に悪意あるそれは、暴れたのだ。
ああ、本当は夢であってほしかった。
いや、今でも思う、夢であってくれ。じゃなければ私は、こんなところでは――無力だ。