届かぬ声
「爆豪くん」
「っ、てめぇ、正気か」
「いいじゃない。それに私に何かするほど爆豪くんは頭悪くないと思う」
「あァ?!」
「はいはい、枕お邪魔しますよーと」
広げたソファベッドに爆豪くんの隣に横になる。
「……ッチ、こっちの気も知らねぇで…」
「ん?何か言った?」
「っ、なんでもねェ!!つか、こっち見んなクソ女!!!」
「しょうがないじゃん!!ってか、あんまり押すと落ちちゃうから!やめて!!」
ぐぐっと爆豪くんがソファから私を出そうとする。私もそれに負けじとやるがさすがは男の子だ。力が強い。
「急に一緒に寝るだのどうしたんだよクソ女」
「はいはい、照れない」
「あァ!?どうしたらそうなんだよ!てめぇの脳内やられてんのか!!」
「もー!いいから寝ようよ!!」
なんとか爆豪くんを宥めて部屋の明かりを消す。
爆豪くんの舌打ちが聞こえたのは気の所為にしておこう。
「……おい」
「?」
「あんま近寄ンな」
「なんで」
「……俺が男だって忘れててわざとやってんのか」
本当は少し自分のペースがあるはずなのにわざと爆豪くんに近づく形で寝ている。
爆豪くんの表情が見えないが声は真剣に言っているように聞こえる。
今まで私から背中を向けていた爆豪くんがぐるりと私の方へと体を向け動かしたのがわかる。
「…今何考えてる」
「……そうだなぁ。少しでも一緒に居たいって。目が覚めて爆豪くんが居なくなっていないか心配」
「っは、」
「…不純な動機でしょ」
「…」
「もー。真面目に言うと黙り込んじゃう」
「あァ?!」
寂しいなぁ。
心の中でそう呟いたはずなのに爆豪くんの目が見開く。あれ?もしかして口に出て。
「……クソ女」
カーテンからさす光にほんの少し爆豪くんと目が合ってるのがわかる。綺麗な赤い瞳が私を捕らえている。目が逸らせれない。
「…寂しきゃ寂しいって言え」
「あ、あれ?声に出てた?」
「あ?てめェが俺に聞こえる声で言ったんだろーが」
「そ、そんなに大きい声で言ったっけ」
また涙腺が弱くなっているのか気を抜けば涙が出そうになる自分を笑い飛ばそうとする。
「はる」
呼ばれる私の名前にビクッと肩が揺れてしまう。
暑くて少し開けていた窓から風が入りカーテンが揺れ部屋に月明かりが入る。
「っ、爆豪くん」
見えたと思えば心做しか爆豪くんの姿が消えかかっているように見え急いで爆豪くんの身体を確かめる。
「っな!!」
「待って、爆豪くん…っ」
「は?んだよ急に…」
「爆豪くん手!!」
はっとして爆豪くんも自分の手を見る。
やはり消えかかっている。
「っ、くそ急すぎンだろ…ッ」
いやだ、なんで。まだ爆豪くんと行きたいところも連れていきたいところも沢山あるというのに。それが許されない。
「っ、おい!!はる!!」
「爆豪くん…っ」
「しっかりしろ」
「だって、いきなり」
「っは、どっちがガキかわかんねーな」
「っ、なにそれ」
抑えれなかった涙が零れる。ひどい顔をしているだろう。
「笑え」
無茶なことを相変わらず言う。私も泣いてさよならは嫌だ。
急いで涙を拭い笑いかける。
「爆豪くん向こう戻っても頑張ってね」
「…」
「ヒーローに、なってね」
「…ったりめぇだ」
「No.1 にね」
「完膚無きになってやる」
「あはは、なにそれ」
「…てめェもな」
「…うん。頑張る」
「面倒くさがらずに飯食えよ」
「あはは、お母さんか」
「っ!あァ?!」
「怒んないで…!」
気づけば笑っている。後どれだけ言葉を交わせるのだろうか。ちくちくと心が痛い。
「はる」
「なに、」
なにかを言いたげでその言葉の続きを聞こうとしたがふと今まで感じていた温もりと声が消えた。
「ばく、ごーくん?」
返事がない。
今までそこに居たはずの爆豪くんの感触も温もりもない。
「っ、な、んで……っ!!」
今まで溜めていたものが一気に溢れ出す。
なんで、嫌だ、寂しい。色々な感情が駆け巡る。
何度何度彼の名前を呼んでも返事は返って来なかった。
《届かぬ声》