刻一刻と
夢を見た。
家に帰ると爆豪くんが居なくて私が泣く夢。
こんなに現実味のある夢ってあるのだろうか。
嘘だ、早くこんな夢から醒めて、嫌だ。いつの間にか私の生活には爆豪くんがいて爆豪くんとご飯を食べて一緒に笑いあって。それが当たり前になってきたのに一気に冷める。
どうして。私は爆豪くんの帰るのを協力するだけの立場なのにどうしてこんなに悲しいの。ただただ心がきゅっと締め付けられる想いだった。
「ーーっおい!!」
「はる!!」
揺さぶられているのが分かる。目を開けると爆豪くんが心配した様子で私に一生懸命声をかけてくれていた。
……よかった。
よかった?なんでそんなことを。爆豪くんは向こうに帰りたがってると言うのに。ここでは爆豪くんがなりたいヒーローにはなれないと言うのに何を考えているの私。
自分の頬に涙が伝うのがわかる。
「……嫌な夢でも見たんか」
「………ううん、大丈夫だよ」
へらっと笑ってみせるとうまく笑えていなかったのか爆豪くんにはバレバレだ。こんな夢見なきゃ良かった。
「……本当に嘘つくの下手だな。するならもっと上手くやれ」
爆豪くんの手が私の涙を拭く。その体温にまだ爆豪くんが居るんだと安心する。
「んで、どうしたんだよ。泣いといて何も無いだなんて言わせねーぞ」
「……爆豪くんが居なくなる夢を見た」
「…」
「爆豪くん?」
「……俺も見た」
その言葉に思わず息を呑む。そんなことがあるのかと。
二人同時だなんてそんなのまるで。
「……なにかの予兆かな」
ぼそりと呟いた言葉に爆豪くんも反応する。
「よかった、それなら爆豪くんもヒーロー目指してやってけれるね」
うまく笑えてるのか分からない。行かないでだなんて思ってしまう自分に嫌気がさす。だめ、飲み込んで。
「……お前」
「大丈夫だよ、爆豪くんならなれるよ」
「……」
「よかった。これでよかったんだ」
布団から起き上がると黙り込んでしまった爆豪くんに明るく振舞おうと話しかけ続ける。
まるで自分に言い聞かせるように。
「爆豪くんの個性見てみかったなぁ」
「…」
「爆破だっけ。コントロールとか難しそう」
「…」
「そう言えば会った時に男の人に掴みかかって手からなにか出してたけどもしかしてあれがそうなのかな?」
「…」
「私応援してるから。いいヒーローになってね」
「……」
「爆豪くん?」
「っクソ女が」
今まで見たことの無い爆豪くんが悲痛に訴えている。
「……それがお前の本心かよ」
「……うん」
「だったらなんだよ、その顔」
「な、に」
そんなに酷い顔してるのかな、私。
でも私の思いは爆豪くんには邪魔になる。
「……私だって大人だよ、爆豪くん」
だから子供みたいに駄々なんてこねれない。しちゃいけないの。
「……あー、そうかよ」
「…爆豪くん?」
「てめーには俺がいると邪魔なんだな」
「違う」
「っは、さっきから聞いてりゃ俺が居ない方がいいような口ぶりだな」
「違う!!」
初めて大声を出してしまった。でも爆豪くんが言っていることは違う。全部全部間違えだ。
「違うよ、爆豪くんが居ない方がいいだなんて思ったことがない。
たくさん爆豪くんからもらったよ、爆豪くんが来てから笑顔がたくさん増えた」
「…」
「邪魔だなんて1度も思ったことない」
「っ、」
「ただ寂しいだけ。だからそんな言い方しないで」
「……」
「…嬉しくないの?」
「っ…るせぇ」
「あはは、だって爆豪くん私が困ってたら助けに来てくれるんだもんね」
それは爆豪くんと前に約束した話。
思い出してくれたのか目を見開く爆豪くん。本当にずるい約束をしたものだ。
「…だから爆豪くんは立派なヒーローにならなきゃ」
「…」
「ヒーローになるためにも高校卒業となにか試験とかしないとじゃないのかな?」
「…」
「…もー、しょうがないなぁ」
目を逸らして私の話を聞く彼に体を抱き寄せて抱きしめる。
気を抜くとまた泣きそうになってしまうのを隠すように。
「っ、なに勝手に」
「ふふ。爆豪くんがそんなにいじけるとは思ってなかった」
「あァ?!」
「大丈夫。また、なんて無責任なこと言えないけどね。
それにまだすぐに居なくなっちゃうわけではないだろうし一緒にいれる時間を大事にしたい」
「…」
「爆豪くん?」
「……そーかよ」
そう言う爆豪くんの顔は見えない。ただ少し抱きしめる力が強くなるのがわかる。
あとどれだけ一緒にいられるのだろうか。そんなことを考えながらも今は今居る爆豪くんに目を向けようと抱きしめる爆豪くんの体を抱きしめた。
《刻一刻と》
「…爆豪くん」
「あ?」
「今日一緒に寝よっか」
「あァ?!」
「さーてご飯作ろ」
「っ、勝手に決めんなクソ女!!!」