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「久々だなここも」


駅のホームを降りると数年ぶりに昔住んでいた町に戻ってきた実感が湧いてくる。
今は夏休みで学校も休みだ。この夏休みの期間中はここに住んでいるおばあちゃんに会いに来たのだ。




「……勝己くんも元気かな」



ぽつり呟いた言葉は誰の耳に届くこともなく目的地に向かうために足を早める。懐かしい街並み懐かしい香り。ここは本当に変わらない。


「っわ、ご、ごめんなさ」
「ってぇな!!前見ろ」


曲がり角の拍子にぶつかってしまい怒られてしまう。それにしては聞き覚えのある声だ。それでも彼女には誰なのかはわかっていた。
ーー勝己くんだ。
気づいていても声が出ない。それもそうだ、引っ越す時挨拶も出来ないで何も伝えずに去ってしまった自分だ。彼が覚えてるかだなんて。覚えていたのだとしても『一緒にヒーローを目指す』そんな約束ですら守れなかった私を彼は許してくれないんだろう。


「……すみません」



ぺこりと頭を下げると被っていた帽子を深々と被り立ち去ろうとする。



「……オイ。待てテメェ」
「っひ」



背を向けて去ろうとしたのに腕を掴まれ引き止められる。心の中で気づかないでと願っていた最中だった。




「……なまえか?」




どくり。心臓が大きく跳ね上がる。



「ひ、人違いです」



嘘をついた。咄嗟に出た嘘が凶とでるとは知らずに。
掴まれている腕を大きく勢いよく引っ張られるとその反動で帽子が取れる。さっきまではよく見れなかった顔や体温が互いに目に入る。




「ひさし、ぶり……?」
「っは。久しぶりもいいところだよな
ーーなまえ」



そこには鬼の形相をした幼なじみの彼がいた。







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