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「テメェ。会って早々嘘つくたァいい度胸してんな?」
「っう、ご、ごめん。というか覚えてくれてたの…?」
「は?普通に覚えとるわ。
何も言わずに引越ししたから文句の1つも言えなかっただろ」
「私怒られる予定だったの…?」



相変わらず口の悪い幼なじみだ。小さい頃は『なまえ!なまえ!』と一緒について回ったというのに。それもそうか、あれから約9年も離れてしまったのだ。何かが変わっていてもおかしくない年数なのだ。




「……お前こっちに戻ってきたんか」
「ううん、戻ってきたっていうか今夏休みだからおばあちゃん家に泊まりで遊びに来たの。
9年振りだから道こっちだったかあやふやで……」



携帯を出して位置情報を見て操作をしているとじーっと見つめてくる彼の視線が痛く感じる。



「??どうしたの」

「………貸せ」



手で寄越せと言われると財布なのかと勘違いしたなまえは慌てて財布を取り出そうとする。




「ッちげぇわ!!携帯だ!!」
「ひぇ、そんなに怒らないでよ…はい。何するの?」



渡すと手際よくスマホをいじりはじめる。何をしてるのかと横から見てみるとそこには既に『勝己』と登録された電話帳の画面があった。



「あ、」
「まだ暫くはここに居ンだろ」
「……暫くはね」
「だったら俺が連絡寄越したらさっさと返事返せ」
「え、なんで」
「……1度俺から逃げといてよく言うじゃねえか」
「っひ、わ、わかったから!
それにそれは…ううん。ごめんね、勝己くん」
「……次逃げたらぶっ殺す」
「私殺されちゃうの?とゆーか逃げてないもん。現に戻ってきたし」
「そーかよ」
「っわ。待ってよ勝己くん!」



持っていた荷物をひょいっと持ち上げると歩き始める爆豪。それを見てはなまえも慌てて後を追いかける。



「こっちだろ。相変わらず方向音痴だな」
「わ、わかってました〜」
「……そこは変わらねェか」
「っな」
「……裾掴むのも変わらねえな」
「あ、」


指摘された部分をみると小さい時の癖で爆豪の裾を掴んでいるなまえ。慌てて手を離すが今度は爆豪から手が出される。


「おい」

「??どうしたの?寒い?」
「アホかテメェ!!……手ェ寄越せ」
「手?」
「掴むならこっちにしろ」
「……うん」


なぜか言われるがままに彼と手を繋ぐそれに満足したのかなまえのペースに合わせて歩く爆豪に優しさが感じる。
手ぐらいよく繋いでいたが少し大きくなった今では恥ずかしさを感じてしまう。まだ本当は話したいことがたくさんあるはずなのに話せない。なまえ達は目的地に着くまで手を繋いだままあまり話せずにいた。久々に繋いだ手の温もりを感じながら。






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