05

「……んん?」





もぞもぞと動こうとするがなぜか悟に抱きしめられて寝ている状態になっていることに気がつく。起きるにも起き上がれず寝起きでぼーっとしている頭も次第に起き始める。外が少し明るく見えてきている辺まだ朝方のようだが。
抜け出そうと試みるが中々抜け出せないでいた。確か昨日はソファに横になっていたはず。ベッドに一緒に居るということは悟が運んできてくれたと思うがそのまま寝てしまったのかな。抜け出せないならと身体の向きを変える。時刻が見えると6時と丁度いい時間だ。









「……悟?」









起きているかと思い声をかけると返事は帰ってこない。すやすやと規則正しい寝息をたてて寝ているのがわかるが初日からドタバタしたくはないし私としてはもう動きたいところだ。









「ねぇ、悟」









「……」
「ねぇってば」








「……」
「あ、ちょ、起きてるでしょ!
ねぇ、あたってるから…!変態!離して!」



「……ッチ、生理現象だから仕方ないだろ。おはよ」




「ひゃっ、動かないで…っ」





「……それ誘ってる?」







「馬鹿言ってないで離して…!」
「えー」






「は!な!し!て!!」










わかったよと渋々離してくれる。なんのことだったのかは男性がよく朝に起きるあれのことで私の中でも仕方ないと問題を片付ける。声色からしてからかっていたに違いないが…。












「んー、何食べる?」
「昨日買ったパンが余ってるからそれ食べようよ」
「……あの高そうなやつ?」
「そ。人気のパン屋のやつ」
「適当に作ってもいい?」
「ん。よろしく」








起き上がると手際よく準備に取り掛かる。身だしなみから始まり朝ごはんと。ソーセージに卵と冷蔵庫を覗くと見つかりスープとサラダも作る。






「いい匂い」
「……邪魔」
「いいだろ、別に。続けて」
「後持ってくだけだから手伝ってください」
「おっけー」






準備が終わった悟は暇だったのか途中私の背後にまわり抱きつくかのようにしてくる。高専時代もこうしてくるのは当たり前で変に抵抗がなくて困ってしまう。テーブルに持っていき手を合わせるといただきますと一緒に食べ始める。









「!!美味しい…」
「ふふ、よかった」



「いつでも僕のお嫁さんに来れるね」
「あ、生徒って何人いるの?」
「無視かよ。んー…今3人かな。いい子たちだよ」
「へえ」







あの悟が言うからにはいい生徒達なんだろうな。緊張より楽しみの方が大きい。




「あ、浮気したら許さないよ」
「いやいや、生徒相手にそれはないでしょ…」
「ふーん。あ、硝子も居るよ」
「知ってる。連絡取ってるもん」
「はぁ???」
「言ってなかったっけ?」
「はぁあああ??」
「な、なによ・・」



「……僕だって知らないのに」




そういう悟は唇を尖らせて拗ねている。なんだかその姿が子供みたいでつい笑ってしまう。




「……僕だってなまえと電話したりしたい」
「一緒の家に居るじゃない」
「…………」
「……はぁ、携帯出して」
「??」
「番号。用があるときだけにしてね」
「!!まじ……?」
「……色々知らないといざと言う時に困るし」






嬉しそうに携帯を出し連絡先を交換する悟に笑みが出てしまう。





「よし、これでいつでも連絡取れる」
「本当に必要な時でお願いね」
「……」
「……悟」
「……努力はするよ」





意味深な言葉に手が止まってしまうがそんなこと気にしている時間ではなくなっていることに気がつく。慌てて食べて準備に取り掛かるといよいよという実感が湧いてくる。これから東京で始まる新しい生活に私は胸をふくらませた。






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