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その日はやけに急いでいた日だ。下校時間になり用事を控えていた私は階段を降りて玄関まで慌てて走っていた。





「わっ、ごめんなさ、いっ!?!」

「ーっおい!って、大丈夫か?
待ってろ、今解くから」




前を見ていなかった私は、案の定曲がり角には人が居て、挙句の果てセミロングの髪がぶつかってしまった拍子にのボタンに絡まって身動きが取れなくなってしまう。うん、廊下は走ってはいけない理由がわかった気がする。
顔があげれず誰かは分からないが相手の人は絡まった髪を解こうとボタンと髪を離そうとしてくれている。触れる手が何だか擽ったく感じる。







「うう、申し訳ない…」
「いや、こっちも前見てなかったから。ごめんな」
「そんな滅相もない…!」
「畏まんなって。あ、取れた」
「え、早い…!あの、ありがとうございま、す」







ようやく解けた髪から開放されると今まで相手の顔が見れていなかった私は顔を上げて彼にお礼を言う。
そう、まさか相手が三ツ谷君とは知らずに。





「??どうした」
「み、三ツ谷君だったの…?」
「あ、あぁ。みょうじさん、だよな?」
「っ…!お、覚えてるの…?」
「覚えてるも何も…同じ組だろ」




それに…とほんのり頬を染める三ツ谷君に私の胸はもう胸の高鳴りは抑えられない。しかも彼に名前を覚えられてるとは。私もつい顔が赤くなってしまう。三ツ谷君は私の想い人でもありただ、遠くから見てられるだけでも幸せだと私から接触することは今までなかったのだ。それが今目の前にいるとは。







「??大丈夫か」
「だ、いじょーぶ。覚えてくれてるとは思わなくて…」
「覚えてるよ。みょうじさん可愛いし。つか、髪痛くなかった?」







さらりと可愛いと言葉をかけ、彼は私の髪を心配して心配そうに髪を撫でる。あぁ、もう今日はなんていう日なの。恥ずかしさの余り私の脳内は既にキャパオーバー。思わず「大丈夫。ありがとう」と顔を逸らして言ってしまう。私今可愛くないことしてる。だなんて自分の中では分かってるのにいきなりの出来事に心と体が追いつかない。






「っふ、可愛いな」


「へ」





いきなり三ツ谷君がそう言うものだから阿呆みたいな間抜けな声が出る。それを聞いた三ツ谷君はまた私を見て笑うわけだが。1つ1つの会話にドキドキさせてしまう。





「っ、三ツ谷君さっきから言い過ぎ…!」
「あはは、悪い。つい」
「もー…!」
「てか、みょうじさん急いでなかった?」
「っあ!そうだ」
「引き止めてごめんな」
「ううん!こっちこそ」
「じゃあ、またな。みょうじさん」





そう言う三ツ谷君は私の頭をくしゃっと撫でていつも見せてくれている笑顔を見せてくれる。
たかが数十分の出来事なのに彼から「また」と言う言葉がやけに嬉しい。





「あーもう」





三ツ谷君が好きだ。そうただ遠くから想うだけだった私が気持ちを揺すぶられる。
赤くなった頬を冷やすように冷たい風が窓から吹き荒れた。







それだけでよかったのに

(好きが溢れてしまう)







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