02




今日も1日が終わり下校をする。そんな毎日の繰り返しだがあれから場地くんとはあまり話せずにいる。周りの目もあるのかはたまた授業中も休み時間中も勉強をしている彼に話しかけるタイミングを失っているせいかあれ以来彼とあまり話せていない。同じクラスに居るのだからいずれはどこかでタイミングがあるだろうか。そう思い私も毎日をなんとなく過ごしていた。
でも今日は宿題で出されていた範囲の教科書を忘れてしまい慌てて下駄箱まで来た道を引き返して教室に戻った。
中を見るとやっぱり彼はいつものように1人残った教室に勉強をしていた。いや、よく見れば今日は1人増えている。
私はそーっと教室に入り自分の教科書を持っていくことにした。






「……んぁ、名前?」
「ど、どうも」
「……誰っスかこの女」


「この前プリント教えてくれた良い奴だよ」
「!!場地さんが言ってた方ですか!!」
「え、な、何の話??」
「千冬ぅ、落ち着け、引いてんぞ」
「す、すんません……」






初めはキッと私を睨み効かせていた金髪の男子は、場地くんの言葉で一気に顔色を変える。それには私も思わず息を呑む。







「自分は松野千冬です、場地さんの一個下です」
「え、あ、じゃあ同い年じゃ…」
「あー、そうなるな」
「私は苗字名前です。宜しくね松野くん。それと全然敬語じゃなくていいからね?」
「いや、場地さんの恩人の方にそんな……」
「っふふ、何その恩人って」
「っ、」




恩人なんて大それたことはしていないのに面白くて笑ってしまう。松野くんはそんな私を見てびっくりしたのかそっぽを向いてしまう。初対面で笑うなんて駄目だったかな。




「いいからタメでいいからね」
「……うっす」
「名前は忘れモンでもしたか?」
「あ、そうそう。今日の宿題で出てた教科書忘れちゃって…」
「っぶは、名前でも忘れ物とかあんのな!!」
「わ、笑わないでよ場地くん」
「っくく、悪い」
「もー、」





そんな姿を見てか松野くんは何やら気難しい顔をしている。





「……」
「?松野くん?」
「いや、場地さんが女子と話してるの珍しいからつい…」
「そうかぁ?」

「……2人は付き合ってるんですか?」

「「は/はい?」」

「っば!!!んなわけあるか!!!!」
「そ、そうだよ!それにこの前話してからまだそんなに会話出来てないし…!!」
「あ、そうなんですね、俺てっきり…」
「少女漫画の読みすぎだ千冬…」
「す、すんません…」



そう言われると松野くんはまるで叱られた子犬のようにしょんぼりしてしまった。え、今少女漫画って言った…??





「ま、松野くんって漫画読んでるの?」
「??そうだけど」
「もしかして池波矢木先生の漫画って読んだことある…?」
「い、いけはやぎ…??」

「!!知ってます!!!海辺でのあのシーン俺不覚にもときめいてしまって…!!」
「松野くん!!同志!!!」





そう言うと私と松野くんは握手を交わす。少女漫画では王道な作品の一つだ。まさかここで同じ作品好きの人と会えるとは。




「場地くんも今度読んでみる?」
「マジでオススメですよ。俺持ってきますよ」
「お、おう。またな……」
「最新刊来月だから楽しみ」
「俺も楽しみです」
「あ、松野くんまた敬語」
「あー……癖でつい」
「ふふ、その内でいいよ」
「……おう」
「お前ら仲良くなりそうだな」
「??もう友達だよ?」
「っ、は?」
「え、ごめん、違う?同士だからって勝手に舞い上がっちゃってるかな?」
「いや、いいけどよ……」

「っぶは、千冬のその顔中々見ないわ」
「っ、場地さん!」
「お、そうだ、丁度良かった。名前この問題見てくんね?」

「うん?いいよ」
「ここだけどよー……」




場地くんに言われ覗くと英語の問題だった。既に解かれているノートを見てみるが惜しくも回答は間違っており、場地くんに近づき私なりに回答を伝えてみる。それを場地くんはしっかりと聞きなぜか隣に居た松野くんも教科書を覗き込んでいた。




「……どうかな?」
「…………すげぇ」
「……わかりやすい」
「なあ、ここは?」





次はここ。と回答を答える事に次々と質問をされる。私が答えると真面目に聞く場地くんの姿についつい教えたい欲が出てしまう。またそれを教えると彼はすぐに理解して吸収するから驚いてしまう。




「すげえ!!全部解けた!!!」
「俺が教えるより場地さん理解してる…」
「?場地くんすぐに理解出来ちゃうよ?」
「名前の教え方が上手いんだよ。なあ!また放課後時間ある時教えてくんねぇか?!」
「え、うん。いいよ…?」
「……俺も」
「ま、松野くんも?」
「…悔しいけど今のわかりやすかったし」
「あ、ありがとう?」
「それに、場地さんに聞かれた時に俺も答えられるようにしときたいし…」

「っふふ。松野くん、場地くん大好きだね」
「っば、名前!!」
「場地さんは俺の憧れですから!!」






赤面する場地くんに目を輝かせて言う松野くんになんだか心が温まってしまう。そんな理由なら私も断る理由なんかないや。そう思い勉強の件は快く「放課後ならいいよ」と返事をする。その日私は時間が許す限り放課後の教室で3人で席を囲んだ。










(2021.12.12)
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