「終わったー…」
今日もまた1日ハードだった…。
思わずぐったりと机に頭をつけてしまう。これは早く帰って復習しないとと思い体を起こすと響香がいつも通り私に声をかけてくれる。
「ふうか一緒に帰ろ?」
「あ、今日は先約が…」
「早くしねェと置いてくぞ」
「「「ええ!?」」」
またもやクラス皆が驚く。そりゃそうだよね。普段の彼からしたら絶対にないことだ。
爆豪くん隠す気あまりないみたいで私は苦労しますよ!
やましい気持ちがある訳では無いが私としてはあまり大騒ぎにしたくない。咄嗟に嘘の口実が出る。
「爆豪様が勉強教えてくれるということで」
「あ、じゃあ俺も!」
「あァ!?」
上鳴くん哀れ…素直に受け取った上鳴くんは挙手をするがあえなく撃沈。ここは早く退散するのが良さそうだ。
「響香ごめんね、また一緒に帰ろうね」
「あ、うん。いいけど…」
「寮に帰ったら色々お聞かせ願いますわ」
近くに来ていたももちゃんの純粋な瞳ですら今の私には眩しい。
皆にごめんねと声を掛けてからスタスタとすぐに歩いていく彼の背中を追いかけて教室から出てゆく。
…帰ったらって言われたけどまた帰ってからも一苦労しそうな予感がする。
「ねー!爆豪くん待ってよ」
スタスタと聞こえているはずなのに爆豪くんは歩く足を早めるのを止めない。
私もそれに追いつこうとと負けずに追いかける。それでも爆豪くんの背中には追いつかない。
「もー!!爆豪くん!」
追いかけても追いつけずようやく間に合ったと思った束の間。玄関につき下駄箱で靴を履き替えてまたもやすぐに行こうとする爆豪くんを見かねてムッとしてしまう。急いでくつを履き替えて爆豪くんに近づいて ポッケに手を入れているその腕を掴む。
「っ、な」
「何やってんの!早いんだけど!」
いつもより動揺している爆豪くんを見ては何やらいい気分になってしまう。それでも私を置いていった爆豪くんにはなんでという疑問が募る。
「…好きな子置いてそんなに歩いていっちゃう?」
ぴくりと爆豪くんの眉が動く。
「……てめぇが変な誤解されるの嫌がってたからだろ」
「え」
もしかして咄嗟に勉強教えてもらうとか変な言い訳言ったから?
もしそんなことを爆豪くんが気にしてるとしたら。
「嫌だった?勉強なんて言っちゃって」
「…」
「だから誤解されないようにいつもみたいにスタスタ歩いてっちゃったの?」
「……」
「え、本当に?」
反論がない爆豪くん。それは肯定と捉えていいのだろうか。
「あはは、爆豪くんは可愛いなぁ」
「あァ?!」
「うんうん、可愛い」
色々と考えてくれてるんだと思うと可愛く思える。今までの爆豪くんからなら考えられない行動ばかりだが爆豪くんなりに考えてくれてることが可愛く思える。
そんなことを考えていると爆豪くんの我慢の限界を越したのかいつものよう怒鳴られる。
「っ、るせぇ!!!」
「照れてるの?かーわいい」
「ぶっ殺す!!!!」
そしてまた私達の言い合いが始まる。本当に私のどこがいいんだろうかこの人は。
「あ、今日の授業あんまりわからなかったから帰ったら教えて」
「あ?聞いてりゃ分かンだろあれくらい」
「さすが頭いい人は言うこと違う…」
歩き始めながら話すものの今度は私の歩幅に合わせて歩いてくれている。可愛いところがあるじゃないか。
「ねー、爆豪くん」
「あ?」
「今日の夜ご飯なんだろうね」
「……あんま食ってるとブクブク太ンぞ」
「……やっぱり可愛くない」
他愛もない話をするとあっという間に寮に着く。玄関を潜り靴を脱いで中に入る。
「ただいまー……ってまだ誰もいない」
一番乗りだ。
寮の中や靴箱には誰の姿も見えない。
「じゃあ、私着替えてくるから勉強教えてね」
「あ?」
「え、なに」
「…はぁ。なんでもねぇ」
「ため息つくと幸せ逃げるよ爆豪くん」
「っるせぇ!!待たせたら見てやらねぇ」
「待ってて!!すぐ戻る!!」
あ、爆豪くんが笑った。
爆豪くんが笑うところは中々見ない。確かに最近ふとした時に笑ってるけども。それよりも、早く着替えなきゃと思い私は部屋へと向かった。
*
「これがあれば大丈夫かな」
ノートと教科書を持って部屋から出る。すたすたと歩くとすぐに爆豪くんの姿が見える。爆豪くんも着替えたんだ。早い…。
「お待たせ爆豪くん」
「…あと少し遅かったら部屋戻ってたわ」
「またまた〜、そんなこと言っても結局見てくれるくせに」
「あァ!!?」
ギロリと爆豪くんの目が光る。怖い怖い。
「でさー、ここなんだけどさ」
「勝手に始めんなや」
「いいじゃんいいじゃん。爆豪くんこっち」
手招きをするとどかっとソファに座る爆豪くん。
教科書を開いてわからない所を指定すると答えてくれる。口は悪いが教えるのはうまいと思う。上鳴くんや切島くん達が教えて貰いたがる気持ちがわかる気がする。
「……んで、こうなるわけだ」
「あー、なるほど。じゃあ、この問題の時はこの公式を使ってやるんだね」
「…おー、できんじゃねーか」
「っ」
また口角を上げて笑う爆豪くん。どきどきとなぜか自分の心臓が鳴る。
いやいや、まさかそんなはず。顔は赤くなっていないだろうか。バレないように他の科目を教えてもらおうと隣に置いてある教科書を開こうと爆豪くんから顔を逸らして落ち着かせようとする。
「じゃ、じゃあさ!英語も教えてよ」
「あ?まだここの範囲終わってねえだろ」
「そ、そうだっけ?」
「つーか、いきなりどうしたんだよふうか」
「何も無い!!気にしないで!」
顔を見せようとしなかったのが不味かったのか爆豪くんは私を振り向かせようと肩を触る。それに対して肩をぴくりと揺らしてしまう。
「……肩、虫着いてんぞ」
「ひぃっ!!!どこ?!!」
私はこの世で1番虫が苦手だ。爆豪くんに取ってと言わんばかりに嘆いてしまう。
今まで見せないつもりでいた顔が爆豪くんに見られてるということも考えずに。
「っ、なんつー顔してんだ」
騙された。
まだ火照りが冷めていなかったのか爆豪くんに顔を見られる。爆豪くんの手が私の頬を寄せる。そして近づいてくる爆豪くんに私は逃げれなくなる。どきどきと胸の高鳴りは収まらない。
「ふうか」
「っ」
近づく顔に私は押し切ろうともせず受け入れてしまう。
…爆豪くんとキスをしてしまった。唇同士が触れるだけのキス。
それをしたのだとわかった時には顔に再び熱があつまるのが自分でもわかって爆豪くんから逃げ出したくなった。
「……ふうか」
「な、なに」
「好きだって言われた男にンな顔すんな」
「っ、し、してない」
「……なァ、お前」
ガチャり。
賑わい声が玄関から聞こえる。皆が帰ってきたんだ。それが聞こえた私達は元の体制に戻ろうとするが私だけはそうもいかず逃げるようにその場を去った。
後ろで爆豪くんの声がしたが普段通りの話し方が出来そうもなく私は逃げてしまった。早くこの熱も感触もなくなってくれ、思い出すのは真剣に見つめる爆豪くんの顔。それを思い出してしまい私が暫く落ち着くまでには時間がかかった。
《意識》
「あれ、爆豪1人か?」
「ふうかちゃんと一緒に帰ってなかったか」
「…爆豪もしかして振られた?」
「っるせえ!!!」
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