「おい」
「……は、はい」
「どいうことだ??なんでデクから連絡が来るんだ」
「それはさっき私から相談してて」
「……この前言ってた相談ってこれのことかよ」
「そうだね」
「…………ッチ」




今までに聞いたことの無い力強い舌打ちが聞こえてくる。よっぽどこの状況が彼にとっては面白くない状態みたいだ。緑谷さんとは仲が良くなさそうだったけどここまでとは…。




「だめ、かな?」
「あァ!?」
「だって本当に家にいるだけじゃ落ち着かないっていうか…」

「自分がどういう状況にいるか理解できてんのか」
「…それは重々承知してる。だから緑谷さんも行き来する時は人を付けるとも言ってるし爆豪くんも大丈夫な時があれば協力してくれれば安心…ってどの道迷惑かけちゃうのは変わりないけど……」
「……」
「昼間も爆豪くんが仕事だと結局私も1人になっちゃうしそれなら緑谷さんの職場で事務仕事を、っていう流れになって」
「……はぁ」
「……怒った?」
「……怒ってねーわ」
「う、嘘だ。顔が笑っていない!」



こちらに顔を向ける爆豪くんはあまりにも言葉と表情がマッチしてはいない。



「……本当、ならだ」
「うん」
「出来るなら俺のところで働かせたい」
「う、うん?」
「だが生憎人手は足りている。ムカつくがクソデクのとこに行くのが妥当だ」
「!!うん」
「……連絡しっかりと取れるんか」
「それはもちろん」
「何かあったらすぐ呼べ」
「うん…!」
「後、大丈夫なら行き来は基本俺がついてく」
「じゃあ、少しは一緒にいれるね」
「っ、アホかテメェ!!」
「ええ、そこ怒られるところ!?」




どうやら行くことを許可してくれたようだ。爆豪くんも爆豪くんなりに悩んで出してくれた結論なんだろうか。本当に彼は素直じゃない。そこが可愛いところだけども。




「クソデクに必要以上に近寄んな」
「そ、それは無理だよ」
「あ!?俺の癇に障る」
「……それってやきもち?」



みるみるうちに眉間にしわが寄る爆豪くん。そんなはずはないかと冷めた料理を温める。すると爆豪くんが後ろから私を抱きしめる。



「っ、どうしたの」
「…どうもしねぇ」
「……よしよし」
「テメェ本当に鈍いだろ」
「そこまで鈍くないと思うけど…」
「……はあ」
「ええ…なんか機嫌悪い?」


心做しか元気がないように思える爆豪くんが心配になる。暫く抱きしめられていると後ろから爆豪くんの声がする。



「……はるからキスしてみろ」
「はい?」


いきなりの要求に困惑する。それもそうだ、まだ付き合いたての要求なのだ。私からしたことなんて1度もない。



「俺に隠れてコソコソしてただろ」
「だ、だって普通に話してても猛反対だったでしょ?」
「まあな」
「でしょう!」
「…ちったァ俺を安心させろ」
「う……わかったよ、」


確かにここに来て爆豪くんを不安にさせているばかりだ。爆豪くんなりに私を大事にしてるからこその反対なのだろう、きっと。



「目、瞑って」
「……」
「よ、よし」


目を瞑った爆豪を見る。本当に彼は顔が整っている。どきどきと爆豪くんの口に触れるだけのキスをして離れると今度は爆豪くんからキスをしてくる。



「んっ!?」
「俺からしねぇとは言ってないだろ」
「や、やられた…!」



わなわなした私を見て頭を撫でるといつものように意地悪そうに笑う爆豪くん。



「飯食うぞ」



上機嫌な彼は台所へと向かうといつものように残りの支度を行う。それを見て私も手伝う。いつもと変わらない光景だ。ほんの少し心臓がうるさいがここで態度に示すと爆豪くんはまた意地悪く色々言うのだろうか。平然な顔を装い食卓を囲む。今日は爆豪くんの好きな麻婆豆腐だ。




《要求》



「……これだけはうまいな」
「学生時代に中華料理屋でバイトしてたからじゃない?」
「……うめぇ」
「ふふ、それ私の家で初めて食べた時から麻婆豆腐気に入ってたよね。知ってるよ」
「…調子のんな」
「り、理不尽」