爆豪くんが居なくなって1年と過ぎた。
未だに爆豪くんが使っていたソファや朝早くから起きて台所に立って料理を作ってくれていた光景が思い出せる。








「ただいまー…」







いつもと変わらず仕事が終わり家に帰る。その繰り返し。
ひとつ違うことと言えば家に待ってくれている人がいなくなったことだ。それが現実なんだと思い知らされる。爆豪くんもきっとヒーローになるために色々なことをして頑張っているはずだ、私も頑張ろう。そう考えるだけで不思議とやる気になる。寂しさは未だに拭いきれないがなんとか毎日を過ごしてきていた。








「……眠い」








今日は酷く眠い。いつもはベッドまで辿り着きながら行くのだが今日は限界を迎えソファに横になる。
眠気に負け 重たくなった瞼を閉じて私はいつの間にか寝てしまった。


















*















「っ、ん……?」










目が覚める。
さっきまで部屋の中にいたというのになぜかギラギラとネオン街にいるような光が少し見える。驚き目を細めながら目覚めない頭と体を無理やり動かす。
数秒するとようやく視点が合い自分の目で見た景色が。









「……どこ?!」









見慣れない景色だった。
それもなぜか路地裏だろうか細道の壁に寄りかかって寝ていたようだ。さすがに疲れて寝た先が道端とは相当おかしな話だ。
でも私が寝ていたのはソファだったはず。








「……」







状況が整理できない。
立ち上がり周りを見渡す。わけも分からないまま街通りへと目指し歩き始めるとすぐに誰かに手を引かれて街通りから遠ざけられる。






「な、な」
「黙れ。消すぞ」






私の首を掴んで知らない声が私の後ろで言う。
思わず息が取れなくなり かはっ と声が出てしまう。絞められた首が痛む。







「いきなり、なんですか…っ」
「……この辺じゃ見ない顔だな」
「え?」
「……お前、なんでここで寝てたんだ」







なんでってそんなの私が聞きたいくらいだ。







「覚えてないです」
「は?」
「…気づいたらあそこにいました」
「…」
「……あの」
「……イラつく。消えろ」




なんて理不尽だと考えると首を掴む手が強くなる。もうダメだと思ったが
なぜか男が掴んでいた力が緩くなるのに気づく。
咄嗟に距離をとろうと後ろを振り返る。
そこにはフードをかぶった男がいた。






「なんですか急に」
「……」






男は何も答えない。
いきなりの知らない場所。知らない男との出会いに恐怖を覚え逃げようとするが腕を掴まれ逃げることが出来なかった。
男の口角が上がっているのがわかる。
今の私にはそれすら恐怖に感じる。




「なぁ」
「っひ」
「……お前の個性はなんだ」
「こ、せい?」






聞いたことがある響きにどきっとする。
なんだと考えようとするがこの状況に精一杯な私は既にパンク寸前だ。








「個性、ってなんですか」
「……は?」
「え」
「…っくく、面白いやつだ」







男の笑い声が響く。本当にまずい。いきなり笑い始める男性に今すぐここから離れないとと危険に思う。
掴んでる手を振りほどこうとするが相手は離してくれない。






「っ、離してください」
「変なやつだな。全部の指をつけているのに消えないのか」




男はその場にあった空き缶を拾うとみるみるうちにサラサラと形を失い粉砕した姿を見せる。こんなことが有り得るのか。





「……ま、マジック得意なんですね」
「は?さっきから何言ってんだんだよお前」
「いやそちらこそ…」
「……」
「それよりも早く離してください」
「自分の状況わかってて言ってるのか?お前は連れてく。気に入った」
「どこも気に入る要素なかったですよ!離してください!」







大声を出し誰かを呼ぶが誰も来ない。どうしようもないこの状況に泣きそうになる。








「おい、黒霧」
「はい」







いつの間にか現れた人間じゃない人が現れる。見たことの無い姿にまた困惑する。







「……いつからそこに?」
「お前もう黙ってろ。殺すぞ。
黒霧、こいつ連れてく」
「?!何を言って」
「気に入った。見ろこいつ。全部触れてるのに何ともない」






そう言うと私を掴んでいる手に驚かれる。さっきから一体なんなのよ。







「……ほう。面白いですね」
「だろ」
「いや、私行きません。帰ります」
「……帰るとこあるのかよ」
「あ、ありますよ」
「ここで寝てた奴がか。ホームレスじゃないのかよ」
「あ、あれは疲れてたんです!てか、家だってあります!放っておいてください!」







勢いよく手を振りほどくと掴まれていた手が離れる。
その隙を逃さずすぐさま人通りの多い道に戻ろうと足を走らせる。





「ッチ、黒霧。連れてこい」
「…!!死柄木弔、個性が発動できない」
「っ、さっきからあの女…!!」







「っ、はぁ」







もう少しだ。普段から走る機会が中々ないのか運動不足な自分を呪いたい。
人通りへと出てすぐに叫ぼうとする。









「っ、助けてくださ、い……」








人通りに出ると見たことの無い光景が広がっている。
人もいる。が、人じゃない生き物もいる。その光景に息を飲み立ち止まってしまう。本当にここはどこなの。

立ち止まっているとドカンッと電柱が後ろで倒れる。







「…っ、今度は何」








後ろを振り向くともはや人ではない怪人のような生き物がコキコキと首を鳴らしこちらを見ている。
街の人々はパニックになりその場から皆逃げ出す。私も逃げようと走る。






「っくはは!!」

「敵が出た!!」
「ヒーローはこないの!?」





街の声と次々と起こる出来事に夢を見ているのかと疑うが先程まで首を絞められていた感覚もこの恐怖心も正しく本物だ。
次々と街を壊すその姿は恐ろしい。

倒れた電柱により建物から火がつく。
辺りは煙と悲鳴でいっぱいになる。

私は必死に逃げようと走っていたが途中で崩れた瓦礫が道を塞ぐ。後ろにはわけのわからない光景と街を壊す怪人のような奴が居て後戻りが出来ない。私は逃げ道を失った。










「キヒヒ、最っ高に気分がいい」
「っ!!」






ドスドスと音を立てて近づく音が聞こえる。










「!女が居たか。逃げて見せろよ」






人の反応を面白がるように地面に拳を叩きつけヒビを入れる。無茶苦茶だ。
回り込もうとするがすぐに捕まってしまう。






「っう」
「あァいいなぁその顔。痛みつけている間にヒーローが助けにくるのかそれともここで死ぬか。どっちが先だろうなァ?」







勢いよく壁に飛ばされ背中が痛い。とんだ災難だ。ぐるぐると意識が朦朧とし始める。まだ、ここで倒れてはダメだと踏ん張る。









「……お前さぁ」
「っ、な、んで」






気づけばさっきまで私の首を締め付けていたフードを被った男がいる。
また追いかけてきたのかと逃げようと立ち上がる。







「なァ。こんなになってるのに誰も助けに来ないんだ。世の中腐ってるよな」
「…っ」
「……俺とこい。そしたら助けてやるよ」





痛む背中を背に男を信用してもいいのかとこの期に及んで考えてしまう。差し伸ばされる手にじっと見てはどうしようもないこの状況に手が伸びる。あと少し。あと少しでこの男の手をとるその手前だった。






ドカンッ










建物を壊した音ではなく。爆破したような匂いと光。
私はその手をとらず唖然とした。









「っ、怪我人は居ねぇか!!」
「あっちに誰かいる!!」
「か、かっちゃん待って!」










なぜか心臓がどくどくと脈を打つ。










「……!!」
「ば、くごーくん」








見間違えじゃない。私はこの人を知っている。



…そこには爆豪くんがいた。











《再会》