05

「おはよう」
「おはよう、デク」


同じヒーロー事務所所属でデクのサイドキックでやっている雪は今日もまた緑谷と必然的に顔を合わせることになる。
全く微動だにしない彼女を見てはしっかりと仕事モードに入っていると感じさせられる緑谷もまた身を引き締めてヒーロー活動に勤しむことを決める。


「今日もパトロール午前中から一緒に回ろっか」
「そうだね。最近ここの管轄内も少し敵の動きが増えてきたもんね」


ここ最近はまた敵の動きが増えてきたこともありどこの事務所も巡回を強化している。人々を困っている人を助けてこそのヒーローだからだ。


「うう、それにしても暑い!!」


ほんのり汗をかいて体がだるそうにしている雪の個性は風雪と風と雪を扱う個性だ。雪を扱う分暑さに弱く暑い日になると暑さで体が弱くなる。もう半分の風で自分を涼しくしようとするが暑さが加わり生暖かい風が雪にくる。個性を同時に出したらいい話だがこうも暑いと雪の個性は操作が難しいようだ。


「雪ちゃんの個性って便利そうで便利じゃないよね…」
「もー!!」
「あ、そうだ。いいのあるよ」


取り出したのは液体の入ったお洒落なスカーフだ。それを雪に向けて雪の個性を使ってと伝え雪もピンときたのか緑谷の言われた通りにする。すると液体の中身は凍りあっという間にひんやり冷たい首巻の完成だ。



「暑くなったらまた個性使って冷やしたらいいよ」
「!!緑谷くん…!いつの間にこんな素敵なものを…!」

嬉しいのかついヒーローネームから普段通りの緑谷くんに呼び方が変わる。本人も気にも止めていなく緑谷も『まぁ、いっか』と雪に対して甘くなる。それに今は意図的でもなくほかのヒーローも要請や見回りと事務所には2人だけだ。
それもそのはず先程の辛そうな顔はたちまち笑顔に変わりその笑顔をみて緑谷も一安心だ。雪の申し出があった通りにひんやり冷えた首巻を巻いてスカーフ状にする。


「っん、気持ちい」


へにゃりと笑う雪。
ーーなんだかいけないことをしている気分だ。
雪の反応がやけに色っぽくて直視できなくなる。雪からしたら暑くて少し汗をかいている程度だ。


「…」
「っひゃ、つ、冷たいよ、緑谷くん」


冷たくなった首巻を渡す過程ですっかり自分の手も冷えきった両手を雪の両頬を挟むよう触れる。緑谷の行動に驚くものの今のそれは彼女にとって熱を冷やしてくれる1つとしてすんなりと受け入られる。添えられた緑谷の手に自分の手を重ねては気持ちよさそうに顔を寄せる。
ーーそれはまずいって…可愛すぎる…!




「……ねぇ、雪ちゃん」
「んー」
「っ、それの開発お願いしたの僕なんだ」
「そ、そうなの?!ありがとう…いや、なんかお礼するよ申し訳ないし…」
「そう?じゃあ、今度また雪ちゃんと呑んでみたいな」
「そんなのでいいの?大丈夫。その時は奢るね」



ーー奢るなんて寧ろ僕が奢るよ。また1つ楽しみが増えた。
飲み会の席では飲むことはあったが今まで2人で飲むだなんてことは出来てはいなかった緑谷に撮っては楽しみで仕方ない。



「それじゃあ、行こっかホワイティ」
「うん!行こうデク」



ヒーロー名を呼び合い今日も見回りからのスタートだ。2人は管轄内のルートへと向かった。