04



「おまたせ」
「あ、ありがとう」



テーブルに置かれた紅茶からはいい香りがする。だが緑谷は今はそれどころではない。
ーー雪ちゃんの部屋に入ってしまった。めちゃくちゃ雪ちゃんの匂いがする。
好きな子の部屋で2人っきり。しかし相手はまだ意識もなく自分から恋とはどんなものなのかを教えると伝えた奇妙な友達以上恋人未満な状態だ。
装飾があまりなくシンプルな部屋だが雪の生活感漂う部屋の中緑谷は1人葛藤していた。




「はい、これ。ありがとう、オールマイトのすごさが改めて感じたよ…」
「!!そう!オールマイトはすごいんだよ……!!」



キラキラと目を輝かせて話す緑谷はオールマイトを話す時は相変わらず少年のように嬉しそうに語る。


「緑谷くん本当にオールマイトのことが大好きなんだね」
「……今も僕にとっては憧れの人だから」
「ふふ、わかるなぁ」



こうしていつも熱弁する自分に引かず緑谷の話を受け止めてくれるところも緑谷が安心してしまう1つの場所だ。



「……緑谷くんさ」
「うん?」
「その、さっきなんで教えてくれるって言ってくれたの?」
「??」
「……恋のこと」



ぎくっ。
なんて答えるのが正解なのだろうか。しかし雪にはアタックをすると決めたばかりだ。ここまできては後には引けない。





「……少しは僕のこと意識してくれるのかなって」
「へ」
「わかってるの?雪ちゃん」



ぐいっと隣にいた雪の元へと近づく緑谷。しかし雪も反射的に後ろに下がってしまう。そんな雪を見ては近づいてまた下がるの攻防に入る。
…がそんなことも続くわけでもなくすぐに壁に追いやられる。そしていよいよ詰められてしまった距離に雪は焦る。





「み、緑谷くん?」
「簡単に男の人を部屋にあげたら駄目だよ。何されるかわからないよ?僕だったから我慢できたけど…」
「だ、だって緑谷くんはそんな人じゃない」
「……今詰められてるのに?」
「う、そうだけど」




罰の悪そうな顔をする雪を見ては心が痛む。それでも彼女は無防備すぎる。
ーー少しは僕も男なんだと意識してほしい。



「僕はね、雪ちゃんのことが好き」
「……」
「……少しはさっきなんであんなこと言い出したかわかった?」
「……に、鈍いって私の事?」




そっちか!と思わず突っ込んでしまう緑谷。雪とはいうと放心状態に。まさかその相手が自分だったとは思わずに今日1日自分が彼に対してかけていた言葉を思い出すとあまりにもひどいことだ。なによりもいつから緑谷は自分のことを好いてくれていたのだろうか。頭の中はいっぱいいっぱいだ。



「緑谷くん近い…っ」
「わざとだよ。これで少しは意識してくれるようになったかな?」




にこっと笑う緑谷だが普段の笑みとは打って変わって少し悪戯そうにする。




「今日1日僕と手を繋いでみてどうだった?嫌だった?」
「……嫌っていうか、その、男の人なんだなって思って、」
「……少しはどきどきしてくれたんだ」
「す、少しね」
「…………雪ちゃん可愛すぎ」


雪の頬に手を添えるとぴくっと反応する。それですら可愛くて仕方ない。今すぐこのまま押し倒してどんな反応をするのか見てみたい。
しかし雪の嫌がることはしたくはない。きっとこの先に踏み込んでしまったらこの関係も呆気なく終わってしまう。今は我慢だ。ぐっと堪え再びにこっと笑うと雪から離れては立ち上がる緑谷。



「じゃあ、また明日」
「う、うん」
「ちゃんと雪ちゃんにも好きだって言って貰えるように頑張るからね」
「み、緑谷くん?」
「おやすみ。しっかり休んでね」
「……おやすみなさい」



大きな発言を残して何事もなかったかのように立ち去る緑谷をみて一気に緊張から解かれて力が抜けてく雪。




「……びっくりした」




まだどきどきと心臓が鳴っている。明日もまた仕事で緑谷と会うと思うと普通にできるか少し不安だ。一先ず今日は緑谷に言われた通りに休むことにしよう。仕事に支障が出ないように。