ふわふわ漂うわたあめの中で、神様に出会った。
何を望む?
そう聞かれたので、
美鳥屋のカステラ食べたい。
とお願いしておいた。


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「守也ー、先に下行ってるからね」
「うん。ありがと姉ちゃん」
蝉もそろそろ鳴くかという頃。
数日前に熱中症でぶっ倒れた俺は、今日ようやく退院出来ることとなった。
部活中にいきなり倒れたので、周りにいたみんな慌てたらしい。見舞に来た友人がやれやれとでも言うように教えてくれた。
多分そのやれやれは俺に対してだ。
ぶっ倒れてみんなに心配かけるとはどうしようもない野郎め、と言外に批難しているのだろう。
もし俺が友人の立場だったら同じように呆れていたと思う。
彼らの他に見舞いにきたのは姉ちゃん一人。
父さんも母さんも仕事で忙しいだろうし、案外元気そうだから諸々は任せてくれと二人に話をしたらしい。本当にあれこれ世話をされてしまったので頭が下がる一方である。
今日も家まで送ってやろうと車で来てくれた。
「あれで何で彼氏いないんだろ」
ぷらぷらとまとめた荷物を手に一階に向かうと、そこには姉ちゃんや看護師さんの他に一人の男性がいた。