家にはよく伯父が遊びに来ていた。
どこにでもいそうな、取り立ててこれといった特長のないただのオッサン。
彼は女性向けの小物だか置物だかを作って生計を立てているらしい。収入はそこまで多くないようだが、気楽な独り身だから何の問題も無いのだろうと母が皮肉混じりに言っていた。何かにつけて家にやって来る兄が疎ましいらしい。
実際私も彼の訪問を快くは思っていなかった。
いくら幼少期世話になった伯父だとは言え、家族ではない者にいつまでも家にいられるとやはり窮屈でしかない。
さらに彼は、大抵の場合連絡も寄越さずに急にやって来るため、自宅に親しい友人を招くこともなかなか叶わない。
そしてそんな彼の訪問理由はというと「もしも父母(つまり私の祖父母)が倒れたらあの家はどうしようか」だとか「今度一緒に食事をしたいのだけれどいつが良いか」だとかそういった電話やメールで良いだろうと怒鳴りたくなるような事ばかり。
たったそれだけで何時間も家に居座り、日によっては夕飯の席にまで同席していく。
これを鬱陶しく思うのも仕方ないはず。
私が推測するに、彼も長年独身貴族の身を貫いているとはいえ、やはり寂しくもなるのだろう。シスコンの気もある彼は自身の姉、つまり私の母に心の充足を求めて我が家に来ているというわけだ。
可哀想に、兄を無下に扱うこともできない母は毎度毎度その相手をさせられている。
しかし可哀想とは思っても私にそれを助けるつもりは毛頭ない。自分がその慰みに巻き込まれては堪ったものではないからだ。帰宅時に彼が自宅にいることを確認できた場合はそそくさと自室に引きこもり大人しくするのが私の常である。
まあ伯父の目的は母であるので、私がわざわざ姿を見せずともあちらとしても何の問題も無いだろう。
そう思っていたのだが。
「エイ、大輔がエイとお話がしたいんだって」
いつも通り伯父の話し相手を務めていた母が私を呼び出してそう言った。
控えめに居間に顔を出すと、伯父がにんまりと笑った。
「久しぶりに英くんとお喋りしてみたいなあって。ほら、昔、よく遊んだの覚えてないかな」
「え、まあ。何となくは」
「ああほらエイ、ぼんやりしてないでそこ座って」
「あっいやいや。どうせなら英くんの部屋で男二人だけの話がしたいなと思うんだけど。いわゆる男子会ってやつ?」
何だろう。この男の言うことはいちいち気持ち悪い。いや、この男が言うから気持ち悪いのだろうか。
「ええ?エイ、部屋に上げるくらい構わないよね 。昨日掃除したって言ってたし」
「えっああまあ。そーね」
母は一瞬戸惑う素振りを見せたが、すぐに私に話を投げてきた。
これ幸いにと私に伯父をパスして逃げるつもりだな
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