「ねえねえやっちゃん」
「なあにゆうちゃん」
夕焼けこやけに子どもが二人。
「あの人だあれ?」
「あの人ってどの人?」
「やっちゃんの後ろにいた人、やっちゃんにいじわるしてた」
「けいの事?あれはいじわるとはちょっと違うかな」
「でもやっちゃんのこと蹴ってた。やっちゃんかわいそう」
「僕は大丈夫だけど、ゆうちゃんがいやならけいと会わないようにするよ」
「やっちゃんがいいならいいの」
「そっか。ちょっと乱暴な人だから、怖かったの?」
「ううん、乱暴な人なのに笑顔がきれいだから、不思議だったの」
「けいの笑顔が、きれい?」
「うん。きらきら光って見えたよ。やっちゃんにいやなことする人なのにきれいに見えるって、変だよね」
「ふははっ、面白いなぁゆうちゃんは」
やっちゃんがクスクスと笑う。
「けいの乱暴癖は僕にとっていやなことじゃないんだ、だから安心して」
「我慢してるとかじゃない?」
「違うよ、けいはあれでいて僕の事が大好きだからさ」
大好きなのに蹴ったりするだろうか。
そんな疑問は顔に出ていたらしく、やっちゃんはそれに答えるように呟いた。
「けいはね、優しいからさ。僕がわざと彼を怒らせたとしても、本気では蹴らないんだよ。必ず僕が痛くないように乱暴する。加減ができる子どもなんだ」
本人にそのつもりはないみたいだけど、とやっちゃんはけらけらと笑う。
わざと怒らせる、痛くないように乱暴する、加減ができる子ども。そのどれもがゆうちゃんにとっては難しくて、彼は分かったふりして俯くしかなかった。