その日の吉原はいつもより賑わいをみせていた。
空と提灯の色が一緒になる頃。
太鼓の音に子供たちのはしゃぐ声。
立ち並んだ屋台からは威勢のいい声が、
大門から沢山のお客さんが流れ込む。
「昼間もすごかったですけど、夕方からこんなに、来るんですね」
「今日は女たちも百華もお客さんも関係ない。
みんなのお祭りだからね」
かき氷を食べ歩く若い女の子たちを眺めながら、日輪さんは嬉しそうに呟いた。
そんなひのやでも、お祭り目当てのお客さんが休憩がてら入ってくる。
「ありがとうございました」
「よぅ、看板娘」
外までお客さんを見送っていると、後ろから声をかけられる。
ひらひらと手を振ってくる銀髪の男性。
「銀時さん! 来てくれたんですね」
「ちょっと様子を見にな」
どうぞ、と中に案内して、いつものように、いちごオレをふるまう。
本来はないメニューだが、銀時さんは特別らしい。
「神楽ちゃんと新八くんは? 」
「神楽は国の大事なお姫さんと朝から遊びに行ったよ。
新八は風邪で寝込んでる姉貴の看病。
まぁ、俺だけだ」
いつもの見慣れた3人ではない事に気づき、問いかけると、銀時さんは頭をかきながら困ったように笑う。
「なまえ、せっかくだから銀さんと屋台回ってきなさいよ。
私は晴太と月詠と回るつもりだからさ。
今日はさくら屋も休みだろう? 」
日輪さんがいいアイデアというように、ニコニコと手を叩く。
時計をみると営業時間の終わりを示していた。
せっかく日輪さんが言ってくれているのに、無下にするのも申し訳ない。それにお祭りなんて、何年ぶりだろうか。
銀時さんをみると、ぽりぽり頬をかき、少し不安げに見つめ返してきた。
「じゃあ、銀時さんが良ければ」
どうですか、と首をかしげれば、
「あぁ、喜んで」
と彼は笑った。
「銀時、なまえに何かあったら、タダではすまぬぞ」
後ろを振り返ると、愛用してるキセルをふかしながら、月詠さんが立っていた。
「お前に言われなくても、 わかってるよ」
「なまえ、いざとなったらアイツを置いて逃げろ」
「何もないから、大丈夫ですよ」
あはは、と苦笑しながら答える。
(この目は本気で言ってる目だ……)
いつのまにか吉原の空にも星が瞬いていた。