「では、これを使ってください」
新井先生には申し訳ないが、
ついさっき貰った、ウサギのお面を差し出す。
「良いんですか? 」
私がもちろんと頷くと、可愛い、と声をあげてそよ姫様は喜んだ。
何気なく銀時さんをみると、まったく、と言うかの様に呆れながら優しく微笑み、頭をガシガシと撫でられる。
「神楽、姫さんのコト頼むぞ」
「銀ちゃんも、くれぐれもなまえに手出すなヨ」
「なんで、そっちの心配なんだよ」
ため息をつく銀時さんに、冷たい視線を送る神楽ちゃん。
それを笑って見つめる、そよ姫様。
今日は色んな人に出会えるな、と嬉しくなる。
それと同時にふと、賑わう街に違和感を覚えた。
「あれ……」
夜の暗がりから、私たちを明るく照らしている提灯が次々と光を失う。
それだけではない。
屋台の灯りも徐々に暗くなっていく。
この異変に気づいた人々も皆、困惑の声をあげている。
「ほとんどの光が」
「大元の、電気室の故障じゃねーの」
もう近くにいる人しか姿を認識出来ない。
胸騒ぎがして、近くにいる銀時さんを手探りで探す。
「きゃぁぁぁ!! 」
「逃げろぉぉ! 」
「落ちてくるぞ! 」
困惑する周囲の中から、悲鳴が聞こえる。
地面に何かを叩きつける音がした。
同時に大勢の人が川に流されるかの様に大きく動く。
一ヶ所の場所から何かから逃げ出す人々。人の流れは私たちのいる場所にもやってきて、体がぶつかり合うくらいにごった返す。
突然、強い力で右腕を引かれた。誰かは至近距離で香る匂いでわかる。
銀時さんは私を自分の方に引き寄せると、その大きな体にすっぽりと収めてくれたのだ。
「痛って! 」
「銀時さん! 」
銀時さんの背中に何が当たる。提灯だ。
やぐらから四方に吊るされているはずの大量の提灯が、私たちめがけて落ちてくる。
もうお祭りどころではない。
混乱した人々に押し潰され、
道に段差があると分からずに重心が後ろに持っていかれる。
「っ! 」
気づいた時には銀時さんを巻き込んで転んでいた。
「なまえ、大丈夫か!? 」
「だ、大丈夫です、銀時さんのおかげで」
その時、暗がりから微かに見えた。
人々の流れと外れ、祭りの場所とは関係のない
路地裏の方向に飛び出す人影。
「待って! 」
私は急いでその人物を追いかけた。