第10話 再会

背後で銀時さんが私を呼ぶ。
しかし、それに応えている余裕もない。



絶対見失ってはいけない
追いかけなきゃ



それだけが頭を支配する。



人通りもない、狭い路地裏。
懸命に追いかける人影が小脇に抱えているのは紛れもなく、そよ姫様だ。




「あ、れ」



次の角を曲がった時、追いかけてた人影を見見失ってしまう。
ドクドクと焦る心臓を押さえてさらに奥へと進む。



「そよ姫様ー! ひっ! 」



叫んだ時、硬いものが体をかすめる。
それは地面にあたると同時に呆気なく割れ、その拍子に破片が足首に飛び散る。
わずかだが血が出てきた。触ってそれは何かを確かめる。


瓦が落ちてきた。一気に恐怖が支配する。あれが頭に当たったらひとたまりもない。



「っ! 」



急いで見上げると、人が屋根によじ登っていた。
私にめがけて、瓦を落としてくるのがわかる。




「ヴゥ……アア」





その人物がうめく。
人間なのか、天人なのかそれすら分からない。





待って、どうしよう
何も考えずに来てしまった
戦う術もない私に何ができる?







銀時さんの声を考えなしに振り払った事を今さら後悔する。




「そ、そよ姫様を、返してください! 」




奥歯がカタカタ震えてるのがわかる。
しかし尻もちをついて、腰が抜けた私が叫んでも説得力なんてない。





「グァァァ! 」




どうやら、余計に機嫌を損ねただけのようだ。

目の前に瓦が落ちてくるのが暗闇でもわかる。
反射的にキツく目をつぶり、腕で頭を隠すように身を小さくする。









「そんな小さくなって、どうしたんだい? 」









この状況に似合わない陽気な声。

顔をあげれば、私を覗き込むようにして座り込む、とある人物。







「あ、なたは……」

「アンタ、いつも怯えた顔してるね」







いつの日かの青い瞳の男性。
手には大きな傘が握られている。雨も降っていないのに。


瓦はその傘が壁になり、私の周りに音を立てて散乱していく。



男はおもむろに傘をとじると、その先を屋根に向ける。
ドンッと短く鈍い音。
もう、瓦が落ちてくることはなかった。





「どうしたの? 腰抜けちゃった? 」




くるりと私に向き直る男の目は、笑っていた。

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