第30話 フラッシュバック

目の前では、姉様とお得意様があはは、うふふと楽しげに宴をしている。
よく見ればここは神威さんが取引? に使っていた部屋だ。


薄暗い灯りに、欄干から差し込む月明かり。綺麗だな、なんて呑気なことを考えてるくらいだから、この様子なら無事に終わりそう。久しぶりに弾く和楽器も少し楽しい。


「おい、そこの娘たちも一緒にどうだ」


急に呼ばれ、一緒にいた姉様と顔を見合わせる。彼女もこのお客は苦手だと言っていた。
断ったら面倒な事になりそう、姉様と目で瞬時に会話をして、私たちはにこやかな笑顔で、


「ぜひ」


とさかずきを受け取った。お酒を盃いっぱいに注がれ、口につける。酔っ払った顔でじっと飲み干したのか見てくる為、無理やり流し込む。苦い味が口の中に広がった。今すぐ水が欲しい……!


「姉様、」
「ちょっと、大丈夫? 上手くやっとくから水でも飲んできな」


そう告げ座敷をあとにする。お客さんも相当酔ってたし、1人いないところで気づかないだろう。

廊下に誰もいないことを確認しながら、ヒタヒタと休憩室へと急ぐ。いつもの着物じゃない為、余計に胸やお腹が締めつけられて、お酒が逆流しそうだ。そして、服が重い。走りたいのに、足がもつれる。


「うぅ……」


我ながら、こんな所で唸り声をあげる女なんて他にいないだろうと思う。
廊下の柱に手を置いたその時だった。



「さっきの子だよなぁ」



角から姿を現したのは、先ほど張見世で私に絡んできた男。ニタニタとさっきと同じ笑みを浮かべてる。



「あの、っ! 」



背筋を伸ばし、明るく挨拶しようとしたその時だ。近くの襖を開けて、中に押し込まれる。段差につまずいて畳に転がった。パタンと襖が閉じられる音。まさか、閉じ込められた……?


「あの、お客様、」
「さっきは邪魔が入ったけど、今度は大丈夫。さぁ疲れた俺の心をお前の身体で癒やしてくれ…! 」


私の声は届かない。薄暗い中で確かなのは男と天井が見えることだけ。口を塞がれて声もあげられない上に、お酒のせいでクラクラする。



「い、やっ」



これは、あの時と同じだ。









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※未成年の方、お酒は20歳になってからですよ!

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