見覚えのある後ろ姿が目に入る。その人物に向けて声をかけた。
「月詠さん! 」
緑がかった金色の髪がサラリと揺れる。
鋭い瞳は私を確認すると、少しだけ丸くなった。
「なまえ」
「こんにちは。この前の……瓦礫の撤去ですか?」
そう呟き、目の前にそびえ立つ建物を見上げた。壁が崩れ落ち、瓦も剥がれた所がいくつもある。
その光景が数ヶ月前、この吉原で何が起こったかを物語っていた。
「すまぬな。茶屋を手伝ってもらう上に買い出しまで」
両手の買い物袋をみて、申し訳なさそうな月詠さんに、私は笑顔で答えた。
「いえ。私はありがたいです。以前働いていた茶屋は、あの騒動で壊れてしまったし」
そんな私を、月詠さんは少しの間、"ひのや" で働かないかと提案してくれた。
「あぶねぇぇぇぇ! 」
「えっ」
叫び声が聞こえたと同時に、私の視界から月詠さんが消える。
澄み切った青い空から、何が降ってくるのが見えた。
「わりぃ! 大丈夫か!? 」
視界から消えたのは月詠さんではなく、私の方。たくましい腕に支えられ、尻もちをついている。驚きで心臓が飛び出そうだ。
「ぎ、銀時さん……」
その人の名を呼ぶと、安心した表情になる。と、思ったら急に噛みつくような目になり、
「神楽ぁ! 馬鹿力で瓦を地面に投げんじゃねェェ! 」
「早く終わらせようって言ったの銀ちゃんネ! 」
屋根の上から可愛らしい声がする。自分の周りをみると、粉々になった瓦。
「大丈夫か、なまえ」
表情はあまり変わらないが、わずかに焦り顔でクナイを持つ月詠さん。あの一瞬で粉々にすごい、と感心してると、
「おい、立てるか」
と銀時さんは両手が塞がっている私の体を起こしてくれる。卵を買ってなくて良かった。
「銀時さん、ありがとうございました」
彼にもお礼を伝えると、ふわりと頭を撫でられた。
「なまえさーん大丈夫ですかー!
てか、これ僕ら余計なことしてません? 」
そんな様子を、屋根の上から見てた新八くんが呟く。隣からひょこっと顔を覗かせた神楽ちゃんは私を確認すると、手を振りながら声を張り上げた。
「なまえごめんヨー! 」
「大丈夫だよー! 」
「ぬしらに頼んだのは間違いだったか」
「せっかく来たのにそれはないんじゃない。月詠さんよぉ」
この万事屋こそ、吉原の救世主
「みんな、あとでひのや、来て下さいね」
「おうよ」
「もちろんネ! 」
「ぜひ! 」
そう手を振れば、みんな笑顔を返してくれた。
こんな賑やかな日が、ずっと続けば良いのに。