第40話 夢と現実の狭間で

ふと、目を覚ませば辺りは真っ暗だった。右も左も、前も後ろも分からない。




「なまえ」




後ろから名前を呼ばれて振り向けば、雅だった。
頭に包帯を巻いている。




「雅! 起きれるの? もう大丈夫なの? 」


「……なまえのせいよ」




その言葉と同時に、突き飛ばされる。雅からの言葉の意味を理解するより前に、別の言葉がふりかかる。



「日輪が怪我をしたのも、お主のせいじゃ。

もう、日輪と晴太に近づくな」



驚いて振り返れば、月詠さんは見たことのないような、冷たい瞳をしていた。
その背後から音もなく現れたのは女将さんだ。



「なまえ。店の為に、みんなの為に、吉原から出てっておくれ」


「お、女将さん」




私を取り囲むように迫ってくる。耳を塞いでも聞こえてくる。氷のように冷たい言葉たち。



「い、いや」
「なまえ」



逃げようとすれば、また誰かにぶつかる。強く腕を掴まれて動けない。ギリギリと逃がさないというように力を込めてくる。



「銀時さん……

神楽ちゃん、新八くん……」



私の腕を掴むのは銀時さん。
いつもの眠そうな瞳は光を灯しておらず、無表情。



「こうなったのも、なまえのせいだろ? 」

「もう、私たちに近づかないでヨ」

「なまえさん、さようなら」



軽蔑するような視線が、ナイフのような言葉が、私に突き刺さる。
違う、違う……こんなの私の知ってるみんなじゃない。



「じゃあな、なまえ」



銀時さんは吐き捨てるように呟いた。
同時に掴んでた手を離され、私はよろめき尻もちをつく。


しばらくその場から動けなかった。
弁解したいのに、声が出ない。溢れるのは涙ばかりだった。




「うぅ……あっ……っ」




もう顔も上げられない。声が詰まる。途切れ途切れに漏れる言葉は、自分でも何を言ってるのか分からない。



トンッと誰かが私の前に立つ。うずくまっているのに、それだけはわかる。





「なまえ」


 


知ってる。柔らかく私の名を呼ぶこの人は間違いなく、神威さんだ。
ボロボロの顔を上げれば、あの鮮やかな青と目が合う。



神威さんはしばらく私を見下ろすと、ふいに微笑んだ。
貼り付けたような見たことない笑顔を私に向け、薄く唇を開いた。




「目障りなんだよ」




それだけを言い残して、神威さんは暗闇に消えた。
私に一瞥もくれず。





まるで私なんて初めから、いないかのように。

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