第56話 調査 沖田side

「ここか……」


江戸も中心部から外れれば、どこにでもあるような田舎の風景になる。
同じような家が並ぶその中に、目的の人物はいた。




「ちょいと、すいやせん」




声をかけると、男はゆっくりと振り向く。若くもないが、かといって年老いているわけでもない。いわゆる、お父さん世代と呼ばるような。



「何か? 」

「あんた、10年前の一夜で滅びた北の村の出身だろィ?
この娘に見覚えはありやすか? 」



男は畑を耕す手を止めて、疑うような警戒するような瞳で俺と写真を交互に見る。


もちろん、旦那の撮ったストーカー風の写真ではなく、なまえちゃんの顔がハッキリと写ったもの。
しばらく凝視した後、思い出したように小さく呟いた。



「なまえちゃん……? 」



同時に懐かしいものに触れたような表情と声色になる。



「この子がなにか? 」



突然尋ねてきた男が、知り合いの写真を持ってるのは不気味だし、疑問しかないだろう。

隠す必要もない。自分の身分を明かし、あの一夜に何があったのか聞きたいと告げれば、複雑な表情になった。



「あれは、私たちにもよく分からないんだ。


村人が何かに取り憑かれたように、隣人を襲い出して……


かと思ったら、今度は黒い服の男たちが一斉に村を制圧し始めたんだ。


悪夢のような日だったよ……」





聞けば、この男と彼女の両親は友人関係だったらしい。


その男の家の玄関に移し、出されたお茶をすする。
思い出したくないことを、聞いたのは悪いと思うが、こっちもなりふり構っていられない。



「この娘が誰かに恨まれる……なんてことありやすか? 」


「なまえちゃんが? 村の人に?
ないない。ここにいた時はまだ7つだよ? みんなに可愛がられてたよ」



だろうな。また空振りか。
にしても、一夜にして滅びた村。そんな大きな戦の記録が、ほとんど残っていないのはいささか疑問ではある。
何か大きな力が働いているのか?





「ほら、そこにある写真。なまえちゃんも写ってるだろ? 」



靴箱の上にある写真を男は指差す。



「数枚の写真しか残ってなくて。
故郷を忘れたくないからね。飾ってるんだ」



祭りの時の写真だろうか。
なまえちゃんは手にわたあめを持ち、浴衣を身につけ、両親と寄り添うように写っている。
他に数名の村人の姿も確認できた。




「おい、コイツは」




俺は村人の1人を指差す。男は写真を覗き込み、少し考えたあと思い出したように手を叩いた。



「その子も村の出身だよ。

なまえちゃんの面倒をよく見てくれる子でね。右隣はその子の母親だ。

あの夜を堺に姿を消してしまったんだ。
……きっとあの戦に巻き込まれてしまったんだね」




写真の人物のあらゆる情報を隣に座る男に聞いた後、写真立てを手に取る。





「この写真借りてもいいですかィ? 」





早く旦那に知らせないと、とんでもない事が起こりそうな気がする。
珍しく俺は、早足で旦那の元へ向かうことにした。

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