第55話 決心

「ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした」


深々と頭を下げれば、上からは軽快な笑い声が聞こえる。この場面に似合わない様子に恐る恐る顔を上げた。



「なまえに何もなきゃ、それだけでいいんだよ。
いつもなまえばっかりに頼ってる女たちも、
これに懲りて、少しは自分でやるようになるだろ? 」



迷惑をかけたのに、女将さんは私を咎めない。
無断欠勤したのに理由も聞かず、むしろ心配してくれる。
すると、後ろから猛スピードで現れたのは、



「なまえのバカ! 心配させないでよ! 」



雅だった。彼女の方が安静にしてなきゃいけないのに、お構いなしに私を精一杯の力で抱きしめる。



「雅も、ごめんね。体は大丈夫? 」

「とっくに動けてるよ! 」



怒ったように頬を引っ張ってくるけど、顔は涙でいっぱいだ。そんな雅の怒ったり、泣いたり、くるくる変わる表情につい笑みが溢れる。



「明日には退院できるんだろ? しばらくは休みな。店のことは心配しないで」



そう言ってくれた女将さんの言葉に素直に頷くが、夢でみた二人がふいに頭をよぎる。
違う、これが現実で、あれは夢。





「なまえ姉‼︎ 」
「なまえ」





勢いよく晴太くんが病室に飛び込んでくる。
鼻水を垂らしながら、私の腰に抱きついた。
その後ろからは車椅子に乗った日輪さんと、それを押す月詠さん。



「じゃあね、なまえ」



気を遣ってくれた女将さんと雅が部屋を出る。小さく振った手をそのまま晴太くんの頭に乗せた。



聞けば、銀時さんの元へ最初に駆けつけたのは晴太くんだったらしい。
こんな小さな子にも迷惑をかけた後ろめたさが相まって、日輪さんが見れない。
晴太くんを夜に走り回せたのは私だ。




「日輪さん、月詠さん、晴太くん。本当にすみませんでした」




何かを言われても仕方ない。受け止めよう。
そう覚悟していたのに返ってきたのは、頭にのる優しい手のひら。





「月詠さん……」

「無事ならそれでいい」

「ここに戻ってきてくれたんだから、それだけでいいんだよ」






どうして、こんなに優しく迎えてくれるんだろう。
どうして、こんなにも温かい。





「なまえ‼︎ 」

「なまえさん‼︎ 」

「神楽ちゃん、新八くん……」



 


息を切らしながら、銀時さんと共に2人が病室に入ってくる。
私の顔を見るなり、新八くんは微笑み、神楽ちゃんはぎゅっと私に抱きついた。
それだけで、2人がどんなに私を心配してくれたがわかる。



ふいに銀時さんと目が合うと、そっと笑いかけてくれた。
その微笑みがあまりにも優しくて、ついまた泣きそうになる。






「神楽ちゃん、新八くん……みんな……

ありがとうございます」




ごめんね、じゃない。
私を心配してくれた、私を想っててくれた、
そんなみんなに今はただ感謝の言葉を。


後ろで壁に寄りかかっている銀時さんを見つめれば、昨日の言葉が甦る。






“あとはなまえがどうしたいか、だな”









どうしたい?








そう、私……










私は……

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