透明ブルー/否欲自殺鬱-Not masochistic feeling depression day-



あのオンボロ歩道橋の上から、身を逸らしてそのまま頭から落ちれば、きっと成功していた……と思う。しかも五分置きで電車も来るので失敗したとしても、電車で轢き千切られるから確実だと思う。
ふと考えてみた。
視界に景色を映して、その後目を閉じ暗転の中、地面からゆっくりと足を離して傾く体が、重力に従って頭に重心を集め下へと落下する様を。
グシャリといった音でも出るのだろうか? それとも鈍い鉄の音でもするのだろうか? 地面に埋められた鉄骨の線路に頭蓋骨が直撃して鈍い音を放った後、カルシウムで出来た脆い骨という頭蓋骨は砕かれて、見たこともないようなドロドロとした物体が液体と固体とが混ざったそれが、自分の中から飛びだして動かなくなるのを。
その動かなくなった自分の姿を。人を奇異的な目で見るだろうか、目を逸らすだろうか凝視するだろうか。
 頭を授業に戻す。
けれど授業内容はあまり頭には入ってこなかった。時間だけはゆっくりと過ぎ去る。楽しい時間はあっという間というのは時々正解で不正解。人間の時間の感覚というものも気紛れなのだろう。長く感じた音楽の授業が終わる。生徒たちは教室を出て行き、自分らの教室へと向かう。
太陽は傾く。ゆっくりと。

[中略]

「はぁ……死にたい……」
ドアを閉め空を見上げた。時計が掛かった少し高くなっている建物。無論中に入ることはできないが時計の点検のため備え付けられている梯子が建物には取り付けられている。上に上がることはできる。
幸稔は銀色の梯子を上り時計の傍まで来た。大きな時計。離れた所から見て見えるのだから近くで見たらそれなりに大きいとは思っていたが、長針と短針がまるで凶器の様に鋭くて思考が繋がる。
「この針にでも刺されたら死ぬよな。まぁ横にしか移動しないし……――あ、長針を曲げておけば時間が来たら貫通するか?」
「……誰かいるのか?」
「!」
下から聞こえた声にそっと下を覗き込んだ。しかし影になっているのか声の主は見えなかった。別に気にすることではない。ごろりとその場で寝転がる。空だけは本当に高くて手を伸ばしても触れない。伸ばした手を落とした。
「ちょーだるー…」
喉に軽く違和感あるけだるさ、なんだか眠い。昼を喰わずにこのまま昼寝をしてしまおうかと目を閉じた時だった。上から声が降って来た。めんどくさそうに片目を開ける。太陽を背にした人影逆光でシルエットしか伺えない。
「だ、れ?」
「私だ」
その声に驚き目を見開く。二人の間を柔らかい風が通り抜ける。
「みずき、ちゃん……?」
「だから、」
そこまで口にして音を紡ぐのをやめた。口元に手を当てて少し考えてから口を開いた。
「私は一瀬(いちのせ)泉希(みずき)。見た目がアレだからよく女子に間違われるが男だ。わかったか? サジとやら」
「え……、オレも自己紹介的なのやるの?」


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