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そして無事、作戦が決まった。
内容はこうだ。

クレア嬢と名前が入れ替わり、犯人を捕まえる作戦だ。
相手は何の武器を装備してくるか不明なため、参列者は錬成で擬人化した物にし、被害を最小限にするのだ。これなら、周りを気にせずに戦える。

そして、予定の場所とは別の場所で、本物のクレア嬢の結婚式を行う。会場変更は犯人以外へはお知らせ済みだ。
犯人の目星は付いているので、これが最善策と考えた。
勿論、この作戦を提案したのは名前だった。

「本当にこれでいいんだな?」
『はい、これしか作戦はないかと』
「だが、君の命が危ない」
『私は国家錬金術師です。こんな所で死んでられません。それに……』
「?」
『大佐が全力で守ってくれるんでしょう?』

満面の笑みで言う名前にマスタングは拍子抜けし、目を見開くと、いつもの笑みで返した。

「言われなくとも全力で守ってやる」





そして翌日、マロン家に作戦内容を伝えに行くと案の定反対された。

「そんな!私の為に命の危険がある作戦なんて……そんなの許せませんわ!」
『これ以外に作戦はないと思うの。私は大丈夫。軍人な上に国家錬金術師よ?そう簡単に死ぬわけないじゃない!』

名前は自信に満ち溢れた表情で、胸にポンっと手を当てた。

「ですが……」
「安心したまえ。名前の事は私が守る。君も君で油断はしないように」
『だから安心して?ね?』

クレアは腑に落ちないが、仕方なく了承した。
チャドもこれ以外に作戦はないと思い、渋々了承した。

「マスタング大佐、名前さん、どうかよろしくお願いいたします」

チャドは2人に向き合い、深々と頭を下げた。

『はい、お任せ下さい』





そして結婚式当日ーーー


マスタングの部下は勿論、軍部から何人か手伝ってもらうよう派遣させた。
被害を最小限にするため、作戦会場には受付やスタッフとして変装をした軍人を配置させた。

時間まではまだあるが、早めの準備に越した事はないので、粛々と進めた。

名前は参列者を錬成していき、服を着せたりカツラを被せてぱっと見バレないように慎重に進めた。

『ふぅ……』
「だいぶ進んだわね」
『リザさん!あ、リザさんお似合いですね!』

作業をしていると、後ろからホークアイに声をかけられた。
振り向くと、首にはスカーフ、服はスーツと、式場のスタッフの格好をしていた。

「そうかしら?なんだか新鮮だわ。名前ちゃんももう少ししたらお着替えね。楽しみにしているわ」
『ウエディングドレスなんて、一生に一度にしか着れないのでなんだかドキドキしま……うっ!』
「名前ちゃん!?」

突然、名前に頭痛が襲った。

『大丈夫です……また頭痛が……』
「無理しないでね(もしかして記憶が戻ろうとしているのかしら……)」

ホークアイは心配そうに名前の背中をさすった。

「私も手伝うわ。無理な時は休んでていいから」
『大丈夫です。終わらせちゃいましょう』

そして名前が錬成して、ホークアイが服やカツラを被せていき、なんとか終わった。それと同時に、衣装担当の人が声をかけてきた。
どうやら、ウエディングドレスへの着替え時間になったようだ。

「あとは私に任せていってらっしゃい」
『はい、ありがとうございます、リザさん。行ってきます!』

名前は会場を後にし、衣装室へと向かった。


衣装室に入ると何人かのスタッフが待っていた。
衣装担当者達は流石に軍部の人間が代用出来ないので、ここはそのまま任せていたのだ。
そして、名前の準備が完了次第、避難するよう指示してあるのだ。

スタッフ達は名前を見ると、クレア嬢ソックリに皆驚いていた。

「本当にソックリなんですね……」
『みいですね』

名前は眉を八の字にして、困ったように笑って答えた。

「では、これからお化粧、髪の毛をやっていきますね。ドレスは最後に着ますので」
『分かりました。お願いします』

そして1時間程して化粧と、髪が終わった。

「名前様、素敵です!」
『自分じゃないみたい……』

ドレスへと着替えようと椅子から立ち上がろうとした時、また頭痛が起き、よろけてしまった。
スタッフに心配されるが、大丈夫と声をかけた。

(なんなんだろう、さっきから頭痛が……)

今回は戦う目的もあるため、通常のドレスとは違い、ワンピースに似た軽い仕上がりのドレス、そして動きやすいようにスリットも入っていた。

(なんだろう、初めて着るのに……初めてじゃないみたい……)

着替え終わると、そこにマスタングが入ってきた。

「やぁ、とても素敵だね」
『大佐!!』

マスタングは新郎役のため、髪はオールバック、服装はフロックコートに着替えていた。
いつもと違う姿に、名前の顔は赤くなっていた。

『た、大佐も……とても素敵ですね……』
「ありがとう。名前、とても綺麗だ。これが本物の結婚式ではないのが残念だ」
『っ!!じ……冗談はやめて下さい』

マスタングの発言に、名前の顔はみるみる赤くなっていき、名前は恥ずかしそうに顔を背けた。

スタッフ達はそのやり取りに見惚れていた。
傍から見れば新郎新婦なのに、スタッフ達はこれが仕事なのか…思うと切ない気持ちになっていた。

「さて、行こうか、名前」
『はい!』

マスタングは左腕を名前に向け、名前はその腕に手を回した。

「どうか、ご無事で……」
『ありがとうございます』

2人を見守っていたスタッフの1人が、心配の声をかけてくれた。
名前は微笑んでお礼を言い、部屋を出て行った。

「名前、くれぐれも無理はしないように」
『分かってます』

名前はマスタングの腕に回した手に、ギュッと力を入れた。



さぁ、ひと暴れといこうか。



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21.05.18

大変お待たせしました……
更新するする詐欺から、やっと実行出来ました……
4年ぶりの更新でした(汗)
久々すぎて、おかしな所あればお知らせください…!

次回でこのクレア嬢の話は終わらせたいですね……