#1 [僕と陸王くんのデートの始り]
今日は陸王くんとの初めてのデート。
陸王くんは僕の家まで迎えに来る事になっていて…陸王くんを待つ僕は朝からずっとそわそわウロウロ…
天気予報では雨のはずだったのに、起きてみたら青空いっぱいのすっごくいい天気。
まるで僕と陸王くんの初デートを応援してくれてるみたいだな〜…なんて思ったりして…

昨日の夜、僕の家に掛かってきた一本の電話。
「…もしもし…秋山?」
「……え?…陸王くん?!」

電話の相手は少し前に僕の恋人になった荒崎の陸王くん。
実は電話がなにより苦手な陸王くん…顔を見て話す方が相手の事がよくわかっていい…って僕に言ってたんだ。陸王くんってあんなに悪そうに見えて案外真面目なんだよね…そこが可愛いとこなんだけど!
その陸王くんからの突然の電話に僕はビックリ!滅多にない事に僕はすごく嬉しくて。

「どうしたの?陸王くんが電話してくるなんて珍しいね!」
「あ…いや……その……」
「…なあに?」
電話口の陸王くんは言葉に詰まってる…やっぱり電話は苦手みたい。
顔が見えないから陸王くんの表情まではわかんないけど…なんか…照れてる?

…陸王くんどうしたんだろ?…
いつもの男らしくどっしり構えている陸王くんとは全然違う様子に僕は首を傾げる…

「…陸王くん…どうしたの?」
「あ…あのさ!……お前…明日の日曜ヒマ?…その……もしなら……デートしねーかなぁーって!」
「え?!…」
「いや…俺も久し振りに練習も試合もないし…確かお前も明日はなんもなかったよな?…その…ヒマだったら……」
「する!!…」
陸王くんからの嬉しいお誘いに、僕は思わず即答しちゃったんだよね!

陸王くんが僕の恋人になったあの日から、時々陸王くんが峰小まで来てくれて何回か部活の帰りにちょっとだけ会ったりしてたんだけど…お互い練習試合なんかで休日も忙しくて都合が全然合わなくて…なかなかちゃんと会えないでいたんだ。
僕は陸王くんとゆっくり会いたいし、もっともっといろんな事話して陸王くんの事知りたいし!
…だから僕は陸王くんからのお誘いが嬉しくて嬉しくて…

「マジ?…良かった……」
陸王くんのホッとした声…もしかして……また緊張してたの?…
電話口から僕の耳に伝わる可愛い陸王くんの安心した声…僕にOKして貰えてそんなに嬉しい?…もう…やっぱり可愛いんだよね…陸王くんって…

「じゃあ…時間は11時でいいか?俺がお前の家まで迎えに行くからさ。どっか行きたい所あったら考えとけよ。」
「…うん!ありがと…待ってるね!」

…あ〜…陸王くんとデート!なんか嬉しいなぁ〜…
やっとやっと大好きな陸王くんとゆっくり会える…僕は思わずにんまり。

「じゃあ、陸王くん明日ね!」
僕が電話を切ろうとすると…陸王くんが言葉を続けてくる…
「……あ!秋山…」
「…なあに?」
「……すげー可愛い格好してこいよ!………」
「え?…う…うん。」
「じゃあ〜…明日な!」
陸王くんの電話が切れて…僕もそっと受話器を置く…

…かっ…可愛い格好?!僕…男だけど……でも確かにデートだもんね…どうしよ…何着ていこう?…

僕はすぐに部屋に上がるとクローゼットを開けて色々見てみる…
…あ〜…悩むよぉ…可愛い格好…可愛い格好…陸王くんはどんな服装が好きなんだろ?まさか本当の女の子みたいにスカート履くわけにいかないしなぁ…あぁ〜…どーしよ…………あっ!…そういえば…

ふっと思い出した僕はクローゼットのタンスの中から一枚の白いボタンダウンのシャツとカレッジ風のカーディガンを引っ張り出す。
実は前にこの服で部員と一緒に歩いていた時に偶然会った部員の友達に “ お前の彼女? ” って間違えられた事があるんだよね…
その時は、僕ってそんなに女の子みたいかなぁ…なんて軽く思ってたけど…

僕はそのシャツに袖を通してカーディガンを羽織り、細身のジーンズを履いてみる…鏡に映る僕は…あ……本当に女の子みたい…僕ってこんなに女の子みたいなんだなぁ…

闘球始めて少し筋肉も付いて、男の子っぽくなったなぁ〜…なんて自分では思ってたけどね…やっぱり僕って女の子みたい…
昔はからかわれたりして嫌だったしもっと男の子っぽくなりたい!って思ってたけど、今は……陸王くんと付き合ってる今は、女の子っぽくて良かったな〜…なんて思ったりして…

僕はそのシャツとカーディガンをハンガーに掛けてぼんやり眺める。
…明日は陸王くんと初めてのデート…どんな一日になるんだろ……
僕は少し緊張したりして…でも一日中陸王くんと一緒に過ごせるなんて…すっごく楽しみ!
…あ〜…早く明日にならないかな…陸王くんに会いたいな…
僕は明日の事を色々考えちゃって…ワクワクそわそわ…
なるべく早く寝ようと思ってたんだけど、やっぱりよく眠れなかったんだよね…

次の日。
僕は朝からそわそわウロウロ…とにかく何をしてても落ち着かなくて…
いつもは休日の午前中なんてあっという間に過ぎちゃうんだけど…約束の時間までが長く感じちゃって仕方なくて。
頭の中は今日一日の事でいっぱい!だって…大好きな陸王くんとの初めてのデートだもん。

10時50分…約束の10分前。僕の家のインターホンが鳴る。

ーピンポーン…

…あれ?ちょっと早いけど…陸王くんかな?
今日の始まりを知らせるその合図に、僕の胸は一気にドキドキと高鳴る…
はやる気持ちを抑えつつ、僕は玄関のドアを開ける…そこに立っていたのは…やっぱり陸王くん!

「よぉ秋山!ちょっと早かったけど…来ちまったぜ!」
「陸王くん!」

…あ〜陸王くんだぁ〜!
僕は待ち遠しかった陸王くん会えてすっごく嬉しくてニコニコ笑顔!
すると…陸王くんは僕の姿を上から下までジーっと見て…

「…ふ〜ん………」
「…なっ…なに?……」
「…すげー…可愛いじゃん!」
陸王くんはそう言うと照れながら微笑んで僕の髪をくしゃっと撫でた。僕に向けられた陸王くんのそんな照れた笑顔がすっごく可愛くて…僕は自分の顔が一気に赤くなるのがわかっちゃって…
「…ありがと………」
そう言うのが精一杯…


「どっか行きたいとこあるか?考えてた?」
「…あ……ご…ごめん。あんまり考えてなかった…」」
昨日はどんな一日になるのかな〜……なんてそんな事ばっかり考えてて…陸王くんに行きたい場所を考えとく様に言われた事すっかり忘れてた…

…映画?遊園地?…う〜ん…どこがいいんだろぉ〜?
僕が慌ててデートにありがちな場所を色々思い浮かべていると…

「…じゃあさ、とりあえず俺の学校見に来ねぇか?」
「……え?…」
僕は陸王くんの予想外の言葉にビックリ。

「俺は何回か峰小に行ったけどよ、お前はまだ荒崎に来た事ないだろ?」
…そういえば行った事ないや…陸王くんの通う学校…行ってみたい!

「陸王くん、僕も荒崎に行ってみたい!」
「じゃあ決まり!……ただ…俺の学校かなり荒れてるからな……ビックリすんなよ…」
…あ…荒れてる…
僕の脳裏にあの荒崎闘球部の面々とあの試合が思い浮かぶ…うわ〜…確かに荒れてるかも…ちょっと怖いけど…でも見てみたい!
僕は陸王くんの事もっと色々知りたくて…荒崎に行ってみる事にしたんだ。

僕の家の近くのバス停からバスに乗って…陸王くんに連れられて僕は荒崎小の近くでバスを降りる。
話をしながら少し歩くと陸王くんが僕に声を掛ける。

「秋山、腹減らねぇ?」
「…あ…そういえば…」
緊張してたのか朝早く目が覚めてしまった僕…なんだか落ち着かなくて朝御飯も早く食べちゃったから確かにもうお腹はペコペコ。

「荒崎の近くにさ、俺達がよく行く美味いラーメン屋があるんだけどよ…お前ラーメン好きか?」
「うん!大好き!」
「じゃあそこ行こうぜ!俺が奢ってやるよ!」」
「えっ?!いいよ!自分の分ぐらい自分で…」
陸王くんからの申し出に僕は慌てて首を振る。

「いいって…メシぐらい男に奢らせろって!」
「でも…」
「いいから!行くぞ!」
陸王くんは僕の手を取ると優しく握って微笑む…

…あっ……手…繋いでる……
僕は陸王くんと手を繋いでるその事実に思わずドキッ…
陸王くんは僕の手を引っ張ってそのまま歩き出す。
繋がれた手から陸王くん体温がじんわり伝わってきて…僕への愛情も伝わってくるみたいで…
僕の手を優しく包む陸王くんの大きな手…なんかすごくあったかい……僕もそっとその手を握り返した。


暫く歩くと陸王くんが立ち止まる。
「ここっ!」
陸王くんの指差す先は一件のラーメン屋さん。お店からはなんとも言えない美味しそうな匂いが…
「おいで、秋山!」
陸王くんは僕の手を引っ張るとそのまま店内に入っていく。

お店に入ると一段といい匂い…
その匂いに僕のお腹もぐ〜…って鳴っちゃって。あ…陸王くんに聞こえてたら恥ずかしいな…
昼時のお店の中はたくさんのお客さん。
僕達が入口のところに立っていると、このお店の店主らしき身体の大きな若そうなお兄さんが陸王くんに気付いて声を掛けてくる。

「よぉ陸王!久し振りだな〜…暫く来なかったじゃねーか…」
「わりぃわりぃ…練習試合とかで忙しくてな〜」
…陸王くん、知り合いなのかな?すごく親しげに話してて…
あ…店主のお兄さんは僕を見付けたみたい…

「ん?…お前の後ろにいるヤツ…見掛けねー顔だな。お前の新しい女かぁ?」
「ははっ…そう、秋山ってんだ。よろしくな!」
「は…初めまして…」
僕の顔を覗き込むお兄さんの威圧感に押された僕は、少し陸王くんの影に隠れながらちょこんと頭を下げた。
「おー!…こりゃまたお前の趣味ドストライクだな〜…」
…ドストライク?…なんだろそれ…野球かな?陸王くんも僕も闘球部だけど…

「陸王はなに食う?いつものか?」
「もちろん!俺はいつものヤツで…秋山は何食べる?ここは何でも美味いぜ〜」
「じゃあ…普通のラーメンにしようかな…」
「ん?それだけか?遠慮しねーで他にもなんか食えよ。」
「ううん!それで十分だよ…頼んでも多分食べれないし。」
「それだけでいーのかよ…ほんっと女みてーだなぁ…」
陸王くんは優しく笑って僕の頭にぽんっと手を置いた。僕はまたその可愛い笑顔に思わず赤くなっちゃって…お兄さんも側にいるのに……恥ずかしい…

「じゃあ、特別美味いの頼むな!」
「おう!任せとけって!」
「秋山、座ろーぜ。こっち来いよ。」
陸王くんは僕を連れて店の奥に進むと空いてる席に座った。僕も向かい合わせて腰かける。
すると…隣の席から陸王くんの名前を呼ぶ声が聞こえてくる…

「…あれ?陸王さん!…」
「おー!滝に白川じゃねーか…なんだ…お前らもデートかぁ?」
「ははっ…まぁ〜…そんなとこで…」
声を掛けて来たのは僕も見た事のある顔…確か…荒崎の闘球部の人だったよね?…
二人は陸王くんと一緒にいる僕に気付いたみたい…

「あれ?陸王さん…そこにいるの…確か……」
「ははっ…バレちまったか〜…覚えてるだろ?前に試合した峰小の秋山!」
「あ〜…やっぱり。どっかで見た顔だと思ったら…」
二人とも僕を覚えてたみたいでじーっと見てる…さすが荒崎闘球部の人達だよね…威圧感がすごいし…
…なんかじっと見られてるなぁ〜…緊張しちゃうよ…

「秋山、紹介するな!俺の仲間のこっちが白川で、向こうが滝だ。」
「こ……こんにちわ…峰小の秋山です…」
僕はまたちょこんと頭を下げた。
滝くんは僕の顔をマジマジと見つめてる…

「お前可愛い顔してんな〜…でもどーしてお前と陸王さんが…」
そう言うと滝くんははっとした顔をして…
「もしかして…陸王さん!こいつと………」
「ははっ…滝は相変わらず鋭いなぁ〜…そう俺の恋人!よろしく頼むぜ!」
「うわ〜…またいつの間に…陸王さんの趣味ドストライクじゃないですか…」
…またドストライクって……本当にどういう意味なんだろ…

僕はおずおずと陸王くんに尋ねる…
「り…陸王くん…さっきもお兄さんに言われたけど…ドストライクってどういう意味なの?」
「ん?そりゃあお前…秋山がモロに俺のタイプだって事だぜ。」
…ええーー!僕ってモロに陸王くんのタイプなの?!なんか…嬉しくて恥ずかしい……

僕は自分の顔が一気に赤くなるのがわかっちゃって…思わず下を向いちゃう。
「なにお前…俺のタイプだって言われて照れてんの?秋山可愛い〜…」
「だっ…だって!陸王くんにそんな事言われたら…恥ずかしいよぉ……」
「そんなに照れんなって!そこが可愛いーんだよな〜…秋山って!」
「もう!!…陸王くんは!…」
からかう様な陸王くんの言葉にもう僕は真っ赤…

「…ははっ…陸王さん達見せつけんの止めて下さいよ〜…なぁ白川!…って…あっ?!」
…あれ?白川くんが少し泣いてる?…

「ううっ…陸王さん……こいつと…」
「しっ…白川のバカっ!泣くんじゃねーよ!」
白川くんの涙に気付いた滝くんは大慌て!
「も…もう食い終っただろ?陸王さんの邪魔しちゃならねーし!さっさと行くぞ!」
「…でも陸王さんが……秋山と…」
「お前には俺がいるからいーじゃねーか!!」
「………じゃあ…俺の事好き?」
「り…陸王さん達もいんのになに言ってんだよ!ばかっ!」
「……好きじゃないの?」
照れる滝くんに迫る白川くん…滝くんの顔はもう真っ赤…

「あ〜もう!!好きだよ!」
「………じゃあ…滝が奢ってくれる…?」
「あ〜もう!仕方ねーな!奢ってやっから早く来い!」
「わーい!滝、ありがと!」
白川くんはさっきまでの涙はどこへやら…にっこりと満面の笑み…
代わって滝くんはあたふたしちゃって!

「じゃ…じゃあ陸王さんと秋山!また!…ほら!行くぞ〜白川!」
「うん!滝…ごちそーさま〜」
二人はバタバタと慌ただしくお店を出て行く。


「くくっ…まったく滝のヤツ…完全に白川の尻に敷かれてやがんな…」
陸王くんはそんな二人を見て意地悪げに笑ってる…

「あいつらおもしれーんだよな〜…滝のヤツ、すっかり白川に溺れちまって。滝はさ、自分が主導権握ってっと思ってんだけどな…実は白川の方が一枚上手でよ…白川の思い通りにされてんだよな〜」
「…ふふっ…なんかそーみたいだね…」
「な!おもしれーだろ?」
白川くんにすっかり恋してる滝くんの様子に、僕も陸王くんも顔を見合わせて笑っちゃった。

「陸王おまちどーさん!」
そんな事を話してる内に、さっきの店主のお兄さんが料理を運んで来た。

「秋山はラーメン…陸王のはいつものな!」
僕は陸王くんの前に並べられた料理を見て僕はビックリ…
ラーメンに炒飯…餃子にライス…机の上はあっという間に美味しそうな料理でいっぱい!別に小さいサイズって訳じゃなくて、それぞれちゃんと一人前ずつあるみたい。

「陸王くん…すごい……こんなに?……」
「そっ!いつもの俺のスペシャルメニューだぜ。」
「…はぁー…陸王くんっていっぱい食べるんだね…」
「そうか?俺はいつもこのぐらいは余裕で食うぜ〜」
…ふわぁ〜…陸王くんいっぱい食べるんだなぁ…男の子だなぁ〜…

僕の前にはラーメンが一杯だけ…僕も男の子だし、もっと食べなきゃ〜…って思うけど…すぐお腹いっぱいになっちゃうんだよね…あ〜こんなとこも陸王くんから見たら女の子っぽいのかも…

「あ〜うまそっ!秋山、食べよーぜ!」
陸王くんは嬉しそうに手を合わせる。
「…いただきます!」
…あ…ちゃんといただきますしてる…偉いじゃない!ふふっ…陸王くんってそうなんだよね!案外ちゃんとしてるんだよね!
陸王くんはニコニコしながら美味しそうに食べてる…僕はそんな陸王くんがすっごく可愛く思えちゃって…

「ん?どうした?食わねーと伸びちまうぜ。」
「あ…うん!いただきます!」
僕も慌てて手を合わせる。
「んー…うまい!」
机に並べられたたくさんの料理はみるみる陸王くんの口の中へ…
…陸王くんすごい…一口がすっごい大きくて…食べ方も本当に男の子だよね…
結局、僕がラーメンを一杯食べる間に陸王くんのスペシャルメニューは全部陸王くんのお腹の中…

「んー…美味かった!ごちそーさま〜」
陸王くんは満足そうに手を合わせる。僕も陸王くんに合わせてごちそうさま。

「さぁ行くか!」
陸王くんは席を立つ。
「金払ってくるから外で待ってろよ。」
「…う…うん。」
僕は店主のお兄さんにごちそうさまでした…って声を掛けてお店の外へ…
少しすると陸王くんもお店から出てくる。

「り…陸王くん…お金本当にいいの?なんか悪くて……」
「それがさ!お前にごちそーしてやりたいって言われてさ〜…タダにして貰っちまった!」
「え?!タダ?!…」
…あのお兄さん、怖そうだったけどなんていい人なんだろ…あ!僕からもお礼を言わなくちゃ!

「陸王くん!僕もお礼を言いにいくよ!」
僕は慌てて店内へ…

お兄さんはお礼を言う僕にすっごくニコニコしてくれて…「陸王は一見怖そうだけど本当はすごく優しくていいヤツだからよろしく頼むな!」…なんて言ってた。
…本当にいい人だなぁ〜…それに、陸王くんはやっぱり僕の思った通りの優しい人なんだなぁ…
陸王くんの事をよく理解しているお兄さんの言葉に、僕はなんだか嬉しい気持ちでいっぱいで…

「お礼言ってきたよ!陸王くん!」
「またお前は素直なヤツだなぁ〜…ん?なんだよニコニコして…」
「なんでもない!」
僕は嬉しさの余りついつい満面の笑み!
陸王くんもそんな僕を見て優しく微笑んでる。

「…じゃあ〜行くか!」
「うん!」
僕達は肩を並べて歩き出す。

「どうだ?美味かったか?」
「うん!すっごく美味しかったよ!こんな美味しいとこに連れてきてくれてありがとう!僕、陸王くんと一緒に来れてすっごく嬉しい!」
僕は隣を歩く陸王くんを見上げてにこっと笑いかける…すると陸王くんの顔がみるみる赤くなってきて…急に黙っちゃって…

「…どうしたの?陸王くん?」
「……ははっ…いや…ラーメンぐらいでそんなに喜んで貰えるとは……思わなくて……」
「…え?だってすごく美味しかったし、本当に嬉しいから…なんで?」
「お前って本当に……いや…なんでもねーよ……」
…どうしたんだろ?陸王くん…
陸王くんは黙ったまま僕の手をぎゅっと握る…
黙って歩く陸王くんをそっと見ると、顔だけじゃなくて耳まで真っ赤になってて…なんかそんな陸王くんを見てたら僕まで恥ずかしくなってきちゃって…
僕は陸王くんと繋いだ手のひらから伝わる体温を感じながら歩いたんだ。
僕達…お互い真っ赤な顔して歩いてたんだろうな〜…
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