ロンリーダンス・ステップ










 
くるくると飛びまわり、白鳥のように美しく舞う少女。ステージと客席はかなり離れているのに、私はしなやかで透き通るように白いその手の美しさに惚れてしまった。
バレエの見どころと云えば脚と体の回転による華やかな踊りだろう。だが世の中の人間は何も分かっていない。このステージで孤独に踊る彼女の手こそ至宝。
その手が大きく振り上げられれば私の心も高鳴り、その手が下げられてひらひらと控えめに舞えば、結局また私の心は高なってしまうのだった。
踊りというのは古代は神に捧げる意味合いを持つものもあったという。現代でも祭りなどで踊られるあれだ。支配者を楽しませるために捧げられる踊りもある。とにかく、踊りとは何か意味があって行われるものなのだ。彼女はいったいなんのために、誰のためにバレエを踊っているのだろうか。思わず私のための踊りなのかと錯覚してしまうほど、私は翻弄されてしまっていた。
今すぐに迎えに行くからね。いい子で待っているんだよ。心の中で呟いたその言葉が彼女に届くことはない。かわいらしい白鳥の骨を折る、そんな残酷な行為に興奮してしまうのは、彼女の手が美しい故に仕方のないことなのだ。
もうまもなく終幕だ。残り僅かに残された時間、白鳥の最期の踊りを目に焼き付けておこう。






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