ぼくらのワンダーランド
「なんであいつなんだ……」
数日前に発表された新しいファイターはクラウドの宿敵、セフィロスだった。
何があったのかは知らない。聞き出すことで彼が嫌なことを思い出すのなら聞きたくない。まあクラウドも話す気も無いだろう。相当嫌なことがあったのか彼の話題はずっと避けている。
「イリア、絶対あいつには近づくな」
「……どうして?」
だが早いうちにここに来た先輩である以上、新しいファイターを気にかけない訳にもいかない。新しいファイターが参戦する度に一緒にトレーニングに行ったりここの仕様を説明したり。私も以前は異郷の地で暮らす不安とホームシックに悩まされていたので、彼らには同じ気持ちを味わって欲しくない。
「そんなに危険な人なの?セフィロスさんは」
「いろいろあったんだ」
クラウドはまた大きなため息をついた。宿敵……と言うと、マリオさんとクッパさん、リンクとガノンドロフさんのようなものを想像するけれど、それ以上仲が悪いとなるとチーム乱闘で当たった時大変だろう。
「でも、ちょっと安心したかも」
「えっ?」
「だって私の世界からはまだ誰も来てないし、他の仲良い子達はみんな自分の世界の子と居たがるもの。クラウドがそうなったら、私ひとりぼっちだもん」
「そんなことない……」
クラウドは私の方を向いた。気を抜けば、宝石のような瞳に吸い込まれてしまうのではないかと言う程真剣な眼差しだった。
「もしティファやバレットが来たとしても、オレはイリアとも一緒にいるからな」
「…ふふっ、ありがとう」
真剣だけど、少し恥ずかしそうに彼は言った。それが嬉しくて私は思わず笑ってしまう。
「これからもよろしくね、クラウド」
「ああ」
微笑んだ彼に私も微笑む。彼が笑うのは非常に珍しいことだ。私には気を許してくれているのだろうと思うと、なんだか胸が暖かくなる気分だった。