おとぎ話のように





ここ数日は立て続けに任務があってなかなか休めなかった。へとへとになってガーデンに帰ってきた私は、血の着いた服を脱いで下着のままベッドに寝てしまったのだった。

「イリア、起きろ」

あれからどのくらい寝ていたのか。揺すられて目を覚ませば、窓からは光が差し込んでいるのが見えた。ぼんやりとした視界に心地いい声が響く。

「スコール……?」
「もう昼過ぎだ、ねぼすけめ」

額を小突かれた。恋人がわざわざ起こしに来てくれたのは嬉しいけれど今は休みたい。起き上がろうとしても重い体に力が入らないので、仕方なく二度寝をすることにした。ベッドの横で、スコールがため息をついているのが見えた。

「あと一時間だけ……」
「駄目だ。何か食べないと体力も戻らない」
「……いや」

精一杯の力で寝返りをする。毛布を抱きしめてスコールに背を向けると、私の顔のある辺りに影ができた。スコールがベッドに上がってきたのだ。
いつもの私なら胸が高鳴って仕方ないんだろうが、生憎今はそれどころじゃない。私の名前を呼ぶスコールを無視して目を閉じていると、毛布を無理矢理盗まれた。毛布強盗だ。

「ほら、起きろ」
「キスしてくれなきゃ、いや!」
「……」

スコールの手の力が緩んだ隙に毛布を奪い返した。ラッキー。この間スコールの部屋にお呼ばれした時に見たものと同じ柔軟剤を使っているので、毛布はスコールの匂いがしていた。あと香水の香りがあったら完璧なのに。顔の辺りまで毛布を引き上げてうとうとしていると、ふいに毛布が下げられた。唇に、暖かな感触が伝わる。

「っ……!?」
「ふ、これ以上されたくなかったら起きるんだな」

冗談で言ったつもりだった。
スコールは得意気に笑って、自分の唇の端をぺろりと舐めた。元から大人びてはいるが、とても17歳には見えないその美しさに目を離せない。身体が熱くなってしまって動けなくなった私を引っ張りあげると、立ち上がって言った。

「次は、抱っこしてくれないといや!か?」
「ひ、ひとりで歩けます!」

この人といたら心臓が持たない。そそくさと部屋を出て早歩きで食堂に向かった。こんな林檎のように赤くなっているであろう顔を見られたら終わりだ。食堂に誰もいないといいんだけれど。







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