彼は色々ぶっとんでいて、とても印象に残るというか、とても気になる存在だ。
友達にはそれは恋のはじまりだと言われたけど、そんなんじゃない。だって卒業間近の三年生で転入してくるというだけでも注目をあびるのに、背が飛び抜けて高くて頭はモジャモジャで、鉄下駄をはき、授業というより学校に来ることがまれなのだから。そのくせちゃっかりテニス部に所属にしている不思議な人だ。
こんだけインパクト強いんだもの、気にならない方がおかしいじゃない?
「それにしたって気にしすぎ、みんなそんな気にしてへんで来ない人のことなんて」
私は今どこで何してるのかなとか、何を見てどう感じてるのかなとかすごく気になる。もっと彼を知りたいし近づきたいって思う。でも中々学校に来ないし、来ても滅多に授業を受けないから会話をできずにいる。今日も来ないのかなあ、と窓から外を見ていたら裏庭に発見した。大きいから目立つよ、千歳君。目立つのに木や草には馴染んでいてなんだかおかしくて少し笑った。たまらず会いたくなって話がしたくて、授業が始まるというのに初めてサボることを決めた。
「なまえどこ行くん?」
「保健室〜」
保健室に近い階段を降りて下駄箱で靴を履き替える。窓から見えた辺りへ行くと同じ場所にいた。そのまま静かに千歳君に近づいてみると、うとうとしているところだった。邪魔にならないようにそっと横に腰をかける。この時間この場所ってポカポカで気持ちが良いことを初めて知った、千歳君は猫みたいだなあ。
のほほんと考えているとこつんと肩に何かがあたる。千歳君の顔だ。
その姿勢辛くないかな、私は嬉しいんだけども!つい頬が緩んでしまう。ほっこりしたまま動く雲を見ていると、少し日影が出てきた。千歳君は少し身震いをして目をさました。
「おはよう千歳君」
「ん、みょうじさん?何しよっと?」
「千歳君見かけたから来たんやけど、気持ち良さそうにしとったからつい一緒にリラックスしてもーた」
「そりゃごめん、なんの用やった?」
用事、なんてものはなくて、ただ会いたい話がしたいだけで来てしまった。でもなにを話そうかは決めていなかった。なにか話さないと、そう思い頭をフル回転して共通の話題を思い出す。
「うーんそうやねー、あ!もう少しで修学旅行なん覚えとる?」
「覚えとるばい」
イベント行事の連絡が伝わっているのかわからなかったし、そもそも普段休みがちなのに来てくれるのか、確認したかった。もし来るなら同じ思いでを作りたい。
「千歳君は参加するん?」
「そうやなあ、行こうて思うとるばい」
「ほんま?!なんや急に楽しみになってきたわ。約束やで、絶対絶対にね!」
「約束、するばい」
嬉しくて小指を出すと、おずおずと千歳君もだしてくれた。ゆーびきりげーんまん、と歌って振っていると困ったように笑った。体は大きいのにちょっと弱そうに見えるその顔がなんだか可愛くて胸がキュンとした。
「みょうじさんは積極的やなあ。ようわからん俺と楽しそうにしてくるる」
「うん、やってずっと話してみたかってんもん!やから今すごい楽しいし修学旅行もめっちゃ楽しみやで!」
「素直で良かね。ちょっと照るるばい」
ポリポリと頬をかく姿に迷惑ではないのかな、と安心する。連絡先を交換しようと思ったが持ってくるのを忘れたというので、今度聞くことにした。
そろそろ寒くなってきたし授業も終わる頃だろう、と一足先に校内へ戻ることへした。また見かけたら声かけてねー!授業もたまにはでてねー!と何度か振り返るが、千歳君は見えなくなるまでずっと私を見ていてくれた。
そんな感じでサボった一時間は充実しました。
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