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あれからなんとなく、千歳君と話す機会が増えて自分で言うのもなんだが、仲良くなった。
見かければ声かけてもらえるようになったし、好きなもの嫌いなものの話をしたり、昨日はどこへ行ったとか、たくさん話してくれる。仲良くなってしまえば意外とおしゃべりなところとか、ぼーっとしてそうで頭の中は色んなことでいっぱいになってるところとか、とにかく初めの強い印象と違って柔らかくて可愛い。近寄りがたい、と言う人もいるけどそんなことないのにもったいないなって思う。

「でね、千歳君トトロが好きなんやって」

「ふーん」

「ジブリ好きなんて可愛いよね」

「せやねー」

「もう、聞いとるー?」

「聞いてるけど興味ない」

ちよは初めからそうだったね、ということでこの時間は、今何が流行ってるだとか女の子らしい会話を楽しんだ。もちろん嫌いではないんだろうけど本当に興味がないんだろう。それでも話を聞いてくれるちよは優しいと思うし、仲良くなれるんじゃないかなとも思った。



昼休みになってトイレに向かっている時、あの優しい声で呼び止められた。

「みょうじさん」

「あ、千歳君!どないしたんー?」

「今日も元気そうやね」

「うん!そういやもうそろそろ修学旅行の班決めあるで」

「みょうじさんはもう決めとっと?」

私のクラスでは班決めは自由にしても良い。だからみんな普段から仲良くしている子と組んでいる。私も例外ではなくいつも一緒にいる友田ちよと同じ班になろうと話をしていた。

「ちよと同じ班にするねん!決めてへんなら千歳君も同じ班になろうやー」

「良かばい」

「ほんまに?!やった!ちよにも話してくるな!」

ここに千歳君が入ってくれたらもっと楽しいのにって思った。だからイチかバチで誘ってみると意外にもあっさり良いと言ってもらえた。あまりの嬉しさにすぐさま教室へ戻りちよの元へとかけよる。千歳は置いてきぼりである。なんで声をかけてきたのか、なんてもはや頭にない。トイレに行けなかったこともすっかり忘れていた。

「なあなあ、ちよ〜」

「なんやまた千歳か?」

「うん、修学旅行同じ班なっても良いかな?」

「別にかまへんで」

「ありがとう!」
ちよ大好きーと抱きつく。

「大好きなんはうちやなくて千歳やろ〜」
修学旅行に好きな人いうたら一大イベントや、きばりや〜!なんてニヤニヤしてくる。千歳君自体には興味はなくても、私が絡むとなれば話は別、らしい。けど。

「ちょっと待った!す、好きやなんて言うてへん〜!」

「はあ?あんだけ千歳千歳言うといて好きやないとかないやろ。どんだけ無意識に大好きやねん」

そういう彼女はゲラゲラと笑っているが、私には笑い事ではなくて顔が火照ってしまう。
そんなに千歳君千歳君って言っていたのか、全然気が付かなかった。もし千歳君にもバレバレなら恥ずかしくて仕方がない。あれだけ楽しみだったのに急に修学旅行に対して緊張してきてしまった。


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