写真部としての活動が一番忙しくなる時期。それは卒業アルバム用の撮影。文化祭、運動会、音楽祭などのイベント時にも引っ張りだこである。部活動に関しては依頼がきたら撮りに行っている。その中でも人気が高いのはやはりテニス部だ。今年は私も三年生、最後のチャンス。今年もゴールデンウィークに合宿があるからそこに来て欲しいと話があった。毎年繰り広げられるジャンケン大会。行く権利は一人だけに与えられる。
「この争奪戦も今年で最後や」
「勝手も負けても恨みっこなしやからな」
「みんな熱くなりすぎやろ」
トモちゃん、ちよちゃん、私がここまで勝ち残った。すでに負けた部員は屍のように倒れている。
小学生の時、あるドラマを見てからクールな女性に憧れ中学校ではクールでいこうと決めていた。おかげで今はクールビューティーと言われている。その異名を崩したくなくて、本当は「勝つのは私」と叫びたいところを必死になって抑えている。そろそろ決まりそうなこの緊張感に「ジャンケンを繰り出すこの右手がうずいているぜ」とかしょうもない台詞が頭に浮かんで笑いそうだ。
「ほな、いくで」
「最初はグー」
「いんじゃん」
「「「ほいっ!」」」
誰が勝ったか負けたかはたまたあいこになるのか、じっくり見極める。トモちゃんがパー、ちよちゃんもパー、私がチョキ。ということは、テニス部の合宿についていけるのは。
「「あー!負けた〜!!」」
「っしゃ!!!!」
「「え?」」
「ん?」
つい両手でガッツポーズをしてしまったが、すぐに姿勢を正す。今なにか見たような、と顔をされたので気のせいじゃないかしらという笑顔で返しといた。
それがつい二カ月前の話。その後は合宿参加にあたっての説明を受けたりいつもより良いカメラを渡されて練習したり、それなりに忙しくしていた。そして今日、いよいよ合宿の日だ。
貸し切りだと聞いていたのでこじんまりしているのかと思っていたが、意外と大きな建物だった。ここで三泊四日も泊まるのか、早く探検したい。けどここで走り出すわけにも行かず荷物を持って大人しく用意された部屋に置いてロビーに集まった。
「改めて紹介すんで、卒アル用の写真を撮りに来てくれたみょうじさんや」
「よろしくお願いします」
「みんなイケメンに撮ってもらいやー」
顧問の適当な紹介、みんなは「元からイケメンやで〜」と冗談にならない冗談を言っている。財前の「先生はお見合い用に撮ってもらったらどうですか」というセリフには泣きそうになっていた。
「みょうじさん、コート内の時はボールには気をつけてな」
「うん、ありがとう」
コートに移動する際、真っ先にこうやって声をかけてくれたのは白石でさすが部長だなと思った。
準備運動している姿、アングルを低めに撮ったり上から撮ったりして、イキイキしている姿を写す。コートの準備をする姿は楽しそうに撮れたし、練習している真剣な姿も撮らせてもらった。
休憩に入ったところでちょうどカードがいっぱいになった。すぐさまカードを入れ替えてプライベートなシーンも撮っていく。抜いたカードはスマホに挿して軽くチェックをする。ベストショットを撮る為に基本は連写なのですぐメモリーがたまる。だからいらないと思う写真はどんどん消していかないといけない。
あー、腹チラ最高。なんという絶景。この躍動感と、チラリズムのバランスがたまらない、これぞ芸術。打つ瞬間や走ってジャンプしての瞬間を連写しまくったおかげで良い写真がたくさん撮れた。でもスピードスターと言うだけあって忍足の姿はブレているものが多かった。午後は忍足中心で撮ろうかなと思っているとスマホを取られた。
「あ!」
「これさっきの写真っすか?」
「そうやけどまだ選別してないから返して」
「……なんや服めくれてる写真多くないです?」
「そ、そうかな」
「ふーん、えらい楽しそうに撮ってるから気になったけどこういうこと」
「ち、違うよ!なんか誤解してるで!」
「みんなに黙っといてほしかったらぜんざい買ってください」
「それはもう脅し!」
もう返してとスマホを奪い返したが、ぜんざい忘れんとってくださいよと悪魔のような笑みを残していった。
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