それがキッカでみんなのことをよく見るようにした。そのうち自然と観察力が身に付いた。今日調子悪そうだなとか、フォーム綺麗に決まったなとか、その程度なんだけど、今までは体調悪そうだなとか全く気が付かなかったことだ。
そうやって頑張っている姿を見てなんとなくテニスがわかってくると不思議なことに『勝ってほしい』『そのためにみんなに何かしてあげたい』と本格的に思うようになった。本来の仕事ではない、選手のその日の記録、部活前に運動と栄養のワンポイントアドバイスを何かしら伝えれるように勉強するようになった。そこで得た知識を同人ネタに取り入れたり、一石二鳥になっている。
ちなみにイベントの日だけは死守して存分に楽しんできました。
「すごい進歩だね」
「私、自分でも驚いてるの」
「あんなに嫌がってたもんね」
「試合出れるメンバー決まったし、やる気モードすごいし感化されたのかも」
そういう影響力はすごいよねーとちよも共感してくれた。ついでに新刊かなり良かったとほめてくれた。次の新刊も絶対に頑張ろうって思った。やっぱりほめられるとやる気がでます。
そんな日々を送り、いざ大会。
負けは許されない。
負けるわけがない。
勝つのみ。
誰もがそう思っていた。
「負けちゃったね……」
誰もが口を開かず重たい空気の中、それに耐えきれなくてぽつりともらす。
一年の頃から頑張っていたわけでも、実際に戦ったわけでもない私にはわからない。でも悔しいって思う。あんなに頑張ってたのに、あれだけ頑張ったのに悔しい。ということは、みんなはもっと複雑な感情を抱いているんだと思う。悔しいとか、やりきったとか、これで最後とか、思うことはたくさんあるんだと思う。
泣いたら駄目だ。選手じゃない私が泣いたら、来年もある切原が困る。全力を出した皆にも失礼だ。
「みょうじ先輩」
切原が掠れた声で私を呼ぶ。
「……はい」
「マネージャー辞めないっすよね?」
「うん、そうだね……うん?マネージャー???」
てっきり負けちゃいましたとか悔しいっすとか言うと思ったのに、マネージャー?なんの話だ!!!このしんみりした空気で何を言い出すんだ!!!
「良かった〜この大会までって聞いてたけど、最近すごい楽しそうだし俺も一緒にいれて楽しいんで嬉しいっす!!!」
なのにそんな笑顔でそんな可愛いこと言われたら………。
「おい赤也。大会までの話は内緒って言うたじゃろ」
「あ」
「あ、じゃねーよ。お前のせいで辞めたらワカメっつーからな」
「それイジメっすよ!辞めないっすよねなまえ先輩!」
「なに軽々しく名前を呼んでいるんですか?」
「そうだね、僕だけの特権だったのに」
なんだよ、それ!!!嫉妬か!!!みんな可愛すぎじゃねーの、あーん!?
「大丈夫だよ!私マネージャー続けるよ!!!」
そう言ったと同時に「いえーい」「思った通りだ」などとハイタッチをしだす。
「え?なに?負けたのにハイタッチ?」
「みょうじは求められると断れないタイプだ」
「え?え?」
「大会は負けてもテニスは続くからね。これからもよろしく頼むよ」
「なんかよくわからないけど、嵌められたことはわかるよ?」
「人聞き悪いな、自分で決めたことだろい?」
もー!!!!いつもこうだ!!!知らない!もうみんな知らない!
でも、みんなの楽しそうな姿を見てほっとした。最初は嫌々始まったマネージャー。平穏な学校生活を送ることが良いと思ってた。けど一生に一度の中学時代。こんなバタバタで毎日が必死なのも、良いよね。
これも青春だよね!!!!
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