これも青春12

六月も終わりに近づいた頃、雨そんなにふらなかったなーと窓の外を見ていた。暑さと妙なジメジメ感に、体力をより奪われている気がする。


「なまえやつれたね」

「ちょっと、そこは痩せたね、じゃないの?」

「いや、うーん……げっそりしてるもん」

そう、ちよの言う通りげっそりである。もしくはぐったり。

何故って、大会にむけて私までハードになった上に、テストが近いんだもん……。へとへとになって帰っても、勉強があるからすぐに寝れない。新作もネームがやっと終わった。イベント受かったから描き上げないといけない。日中は授業を真面目に受けていても、予習復習しないとついていけない。予習してるんだから授業は復習のはずなのに。何回もやらないと理解できない記憶できないこの頭が恨めしい。

「良いんじゃない?」

「どこが!?」

こんな状態の私を見ての台詞とは思えない!!!

「充実してるじゃん」

「あ……」

ちよのこの一言で、今朝家族とした会話を思い出した。


『良かったねなまえ』
『え?』
『最近楽しそうで』
『毎日疲れて体がもたないよ!』
『前は淡々とした生活だったからな』
『平和と言って』
『最近は学校の話たくさんしてくれるから嬉しいのよ』
『前もしてたし!』
『ちよちゃんの話しかしなかっただろ』
『友達いないみたいな言い方やめてー!』
『あとは存在しない男の話ばかりだったし』
『ア、チコクシチャウ』

あれ?切ないことまで思い出してしまったぞ。

「そんなにかわったかな?」

「うん、疲れてるって割には活あって見てると元気になるよ」

にっこり笑うちよにきゅんとする。

「じゃあさ!一緒に充実ライフをおく」

「マネージャーならしないからね」

最後まで言わせてくれよ!マイスウィートハニー!そういうサバサバしたところも大好きさっ!!!




「どうしたの?」

部活が始まって、みんながトレーニングしている間は事務仕事的なことをするようにしている。しかし早く終わったのでコートの方へ行くと誰もいない。辺りを見回すと少し離れたベンチにみんなが集まっていた。次は何をするのか聞きに近づくと少しピリピリした空気。そして先程の台詞に戻るというわけだ。


「大会も近いからね、練習試合をするんだ」

部長である幸村が教えてくれた。

試合といえど練習なのに、何でこんなに空気重たいんだ。
少し、ありえなーい、という顔でみんなを見ていたら柳がひそっと教えてくれた。

「この試合で大会に出られるかどうかが決まる、順番もな」

教えてくれたのは良いが、顔が近く耳元で話されたことにより、恥ずかしさとくすぐったさで、肩をすくめる。

「我々三年にとっては最後の試合。赤也にしても、俺らと仲間として戦える中学時代はこれで最後だ」

真田の言葉にハッとする。

私は途中からマネージャーとして入ったけど、みんなは違う。

一年の頃からずっと大会で優勝するために、毎日しんどい思いをして練習を重ねてきた。その大会も中学最後の試合になるのだ。今までの努力の全てが数分、数時間で順位という形で出る。そのプレッシャーは私には到底想像ができない。

私に、何ができるのだろうか。

とは言え、自分にできることは決まっているので。仕事を徹底するしかない。



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