何を話そうか考えていたら、いつもより遅い時間になってしまった。もう数時間で日付が変わりそうだ……三コールで出なかったらやめよう。
そう思い出てほしいような出てほしくないような、複雑な気持ちでコールボタンを押す。しかし三コールなったところであと一コールだけと追加したが、やはり出ず諦めて切った。きっと寝たんだろう、そう言い聞かせて携帯を充電器に差して布団に潜り込む。
今更お前が好きだと伝えたらどう思われるだろうか。
伝えても良いのだろうか。
いつもなら布団に入ればすぐに眠りにつけるのに今日は何度も寝返りをうっていた。
布団に入ってから三十分もたっていないだろう。
携帯がなる。
始めはメールかと思ったが、なりやまないことに電話だと気がつく。充電は机の上でしている。布団から出るのがめんどくさい。だが明日の朝練や部活の連絡かもしれない、もしかして幸村かもしれない。寝れないとはいえ、もやっとしていた思考が動き出してきてようやくもそもそと動き出す。だが携帯を見て一気に意識がもどる。発信者に表示されていたのはみょうじの文字だった。慌てて取ろうとしたが電話は切れてしまう。
タイミング悪い。もう一度かけようと思ったが、今からかけても睡眠時間が減るだけなのでまた明日にしようとそのまま携帯を置いた。
そう、明日。
まだこれからも時間はある。
この時はそう思っていた。
朝起きて携帯を見るが、結局その後メールも着信も入っていなかった。
でも落ち込むことはなくて、みょうじも今日の昼休みにでも話をしようと思っているはずだと登校した。
朝練が終わり教室へと向かう。
今日からまた、今までと同じようにみょうじと過ごせるのかと思うと足取りが軽くなる。丸井が後ろから「待てよ速いって」と追いかけてくるが、女子じゃあるまい自分のペースで来たら良いのにと足を遅めることはしない。
教室に入り早々みょうじの姿を探すが見当たらない。丸井もすぐに入ってきて「あれ?みょうじいねーじゃん」とこぼしている。
「いつもなら来てる時間じゃき、トイレでも行ってんじゃろ」
「それもそうか」
そう言いつつもなんとなく落ち着かなくて気になっている自分がいた。
結局姿を見せたのはチャイムと同時だった。
そのままおはようを言いそびれお昼はテニス部に引っ張られ気がつけば部活で今のところ一言も話せていない。
「腹減った、なんか食って帰らねえ?」
丸井の一言にほとんどのメンバーが同意して揃って部室を出る。なんとなく正門の方へ目をやると、みょうじが俺の知らない男と二人で歩いている。それを見てる俺に気がついた柳が「噂では付き合うか付き合わないかのところまでいっているらしい」と言うもんだから、周りにいたメンバーにも聞こえていて、一瞬で気まずい雰囲気になる。この時、柳がこんな曖昧な発言をする意味に気がつけないくらい焦っていた。
また明日で良い、なんて何で思えたのか。
いつでも話せる、なんてどうして思えたのか。
みょうじが他の人と付き合うかもしれない、って何で思わなかったのか。
このまま自分の気持ちを伝えなくて良いのか。
そう考えた時、みょうじが俺以外の奴といるところなんて見たくない、そう強く思った。
「悪い、今日は不参加じゃ」
そしたらいてもたってもいられなくて返事は聞かずに駆け出した。
「みょうじ!!」
振り返ったのはみょうじだけでなく隣の男もでそれがどうしようもなく苛ついた。イライラしている俺に気がついたのか、みょうじは隣の奴に「ごめん、先に帰ってて。またメールするね」そう言うと俺の方へ来た。
「どうしたの?」
「いや……もしかして今からデートじゃったか?それなら悪いことした」
少しも悪いとなんて思ってもいない。遠回しに彼氏なのか確認するなんて狡いし臆病だなと自分で思う。
「大丈夫、そういうのじゃないから」
その一言に今はそうかもしれないけど、とモヤモヤするものの安心したのも事実だ。
「お前さんに話しておきたいことがあっての。今時間、良いか?」
「ここで?どこか入る?」
「時間はとらせん」
「わかった、何かあったの?」
みょうじは俺のより小さいため上目遣いになる。そして話を聞き逃すまいと意味もない背伸びをして若干耳をこちらに傾けている。その必死さについ笑いそうになるが、今から伝えることを考えるとやはり顔がこわばる。
緊張は隠せない、大きく深呼吸を1つ。
早まる心臓が煩くて自分の放った言葉は聞こえたのか不安になった。
みょうじはしばしばと瞬きをし頬を赤く染めて小さく微笑む。
「あのね、私も仁王のことずっと……」
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