朝学校へ行けば友田に呼び出された。昨日の別れは同意のはずなのにまだなにがあるというのか。それでも今対応しとかないと後々めんどくさいことになりそうだと裏庭へ向う。すでに友田は来ていて俺が来たのがわかるなり喧嘩腰に話しかけてきた。
「みょうじさんとデートしたらしいじゃん」
「あれは無理やり付き合ってもらっただけじゃ」
「やっぱり噂は本当だねチャラいわ」
「そんなチャラい奴と別れられて良かったな」
「最低」
自分のことは棚にあげるのか、言おうと思ったけど告げ口しただのなんだの見当違いに責められるのはみょうじかもしれないと思うととても言えなかった。だからふりかざす手を素直に受け止めた。
教室へ戻ると丸井とみょうじの会話が聞こえてきた。
「丸井君、キャラメルあったけどいる?」
「いる!!!みょうじって良い奴だよなー」
「大げさだなあ」
「好きになるのもわかるわ」
「へ?なにが?」
「え、なに?なんか言った?」
うっかり口をすべらした上に下手なごまかし方を見ていられず思わず割って入った。
「丸井」
「あ仁王、大丈夫だったか?」
「これ見て大丈夫だと思うんか」
これ、というのは頬に貼った湿布。真田と違って平手打ちが下手すぎて逆に痛い。このままじゃ腫れそうだと保健室へ行ったら湿布を貼ってくれた。
「ほっぺた、どうしたの?」
丸井君は苦い顔をして黙った。呼び出されたのを知っているので大体の想像がつくんだろう。
「なんでもなか」
心配させたくなくて答えなかったが逆に心配かけたみたいでずっと眉をハの字にしていた。
部活が終わりまたもや着替え中に話しかけてくる。
「なあ仁王、彼女と別れたんだろい?」
「その代わりビンタさせてくれ言われてな」
頬っぺたをちょいちょいと指すと、うーわと丸井が顔をしかめる。
「私が振るつもりだったのに生意気じゃーって」
「すごいな、本命が別にいたくせに図々しい」
幸村が言うと何故かグサグサとくるものがある。まるで自分に言われている気分になった。
「でも自分の気持ちに気がつけたき感謝しとる」
別に庇うわけではないが既に彼女に対してなんの気持ちがないため何も思わない。最後に言いたいことがあるからと呼び出されたが、ビンタ一発でなかったことになるなら安いものだ。
「感謝ねえ……」
「丸井、今朝うっかり言いかけてたじゃろ」
「そうそう、声かけてくれて助かったわ。わりいな」
相変わらずみんな好き勝手言ってくれる。それと丸井は絶対に悪いと思っていない。
「じゃあ後はみょうじさんって人に告白するだけっすね!」
別れて良かったんじゃないか。あの頃の仁王しんどそうだったし今すごい良い顔してるよ。
そんな感じで盛り上がっていたところ良くも悪くも空気が読めない後輩のおかげで一瞬時間が止まった。止まったことに気がついた発言者は「なんで?」と言わんばかりの顔。
「赤也、人というものはそう簡単なものじゃない」
「確率低いんすか?」
「そういう話をしているんじゃない」
「でも好きなら好きって伝えないと!せっかく気がつけたのになかったことにするなんて好きって気持ちが可哀想っす」
その赤也の台詞にまた時間が止まる。
今度は重々しいものではなく、してやられた、というのに近い。
「はは、一本とられたね」
幸村のこの一言で場が和みどっと笑いがおきる。
「なんすか部長〜みんな何で笑うんすか!」
「いや赤也サンキューな」
頭をぐりぐりしてやると「子ども扱いしないでくださいよ」と口を尖らせて拗ねていた。
好きって気持ちが可哀想、か。
そんなこと考えもしなかったぜよ。
そうだな、行き場がなくてそのまま忘れられるのは可哀想だ。贅沢を言えば付き合いたい。でも今はただ純粋に自分の思いを知ってほしいと思う。帰ったら電話してみるか。
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