「あかん〜もうこんな時間や!」
「ほんまや盛り上がりすぎたな」
「肝心の問題とけてへんのに!」
少しジュースのシミがついたプリントを、少し乱暴にカバンへしまう。
学校が終わって塾に行って、わからない問題があったから近くのファミレスで友達と勉強をしていた。なんでここまで遅くなったかというと、勉強が進まなかったからだ。
その原因は週刊誌の発売日で、新しい話に花を咲かせてしまったせい。私がとりわけ好きなのはテニスの王子様。最近の展開は神がかっているということを熱弁しすぎた。
そんなわけで、終電ギリギリの時間になってしまった。
「迎えの車くるからついでに送ろかー?」
そう聞いてくれたが断った。なんとなく、風にあたりたい気分。それは満月のせかもしれない、なんてロマンチックなことを考えてみる。
改札を通る時、出発のベルが聞こえた。今までにないくらい駆け足をしたが、階段を降り切ったところで扉が閉まり発車してしまった。息を整えながら電光掲示板を見ると『本日の電車は全て終了しました』と表示されている。
しまった、終電を逃してしまった。まだ友人は近くにいるだろうか。
スマホを取り出そうと思ったところで電車の音が聞こえた。遠くから近づいてくる、ガタンゴトンという音。その方向に目をやると遠くにライトをつけた電車が見える。その端にこの薄暗い中、不釣り合いなポストがうっすら見えた。こんな所にポストなんてあっただろうか。そんなことを考えながら待っていると、電車は停車し扉が開いた。
なんだ、臨時運行があったのか。ラッキー↑!千石の真似をしながら乗るが、一人も乗客がいない。広々座れるなあと思ったが端っこの席を選んだ。
たまたま人のいない車両を選んだのかと思い、隣の車両を見るとやはり誰もいない。運転席にボンヤリ人影が見えるくらいだ。最終電車の後の臨時運行なんて、こんなものかもしれない。もう数秒遅かったら、私も気が付かずに乗り損ねていた。
それにしても不気味だ。深夜、人のいない電車というのは、こんなに雰囲気が変わるものなのか。少し落ち着かない気持ちで髪をクルクルといじる。
はやく着いてほしい、でもここから最寄りまで九駅もある。降りたいけど、そうすると帰れなくなる。とりあえず母に電車に乗ったと連絡しなければ、そう思い鞄を開けようとするが急に襲ってきた眠気。眠気というより意識が朦朧としてきてしまい、全身麻酔ってこんな感じだろうかと頭の隅で思いながら意識を手放した。
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