トラベルトラブル2

どれくらい眠ったのか、ガヤガヤとした音で目を覚ます。ハッと顔を上げると周りはサラリーマン、OL、学生のほとんどで車内がうまっていた。窓から太陽の明かりが入ってきている。この様子からして今は朝なんだとわかった。ギュウギュウ詰めなので通勤ラッシュ時なのだろう。

それにしても、私は一晩をここで過ごしたというのか。もしかして臨時運転ではなく車庫に戻る予定だったのか。じゃあなんで扉が開いたんだ。起きたての頭はうまく働かなくて、ボンヤリと疑問は浮かぶのに、考えることができない。とりあえず降りてみると制服姿の学生であふれていた。きっとこの近くに学校があるんだろう。

一度帰るか、このまま学校へ行くか。とりあえず顔を洗ってスッキリしたくて、構内のトイレへ入る。ハンカチで顔を拭きながらおじさんみたいな事をする日がくるなんて、と少しダメージを受ける。

髪もボサボサなのでは、と鏡を見ると、何かがおかしい。
私の制服、黒に近い紺のありきたりなものだったのに。なんだ、このワンピース。しかもネクタイみたいなところになにか書いてある。まるで魔法陣みたいな……鏡越しだと細かいものが見えづらくて手に持って顔を近づける。丸があって、四ケ所に文字があって、四、寺、宝、天……。

あれ?なんだろう、この文字に見覚えがあるぞ。なんか胸が高鳴るぞ。ドキドキと煩い心臓を落ち着かせるようにゆっくり逆方向に読んだ。四、天、宝、寺……四天宝寺!!!

やっぱりそうだ。なんで、いつのまに。確かに制服ほしいなと思っていたけど、買った記憶がない。もしかして、まさか、そんな気持ちでホームに戻ると駅名に『四天宝寺前』と書かれていた。現実世界ならこんな駅名はない。

きっと私はテニプリの世界にいる!そんな夢を見ているに違いない!そうとわかればこうしちゃいられない!

聖地である四天王寺は家が近いこともあって何度か聖地巡りをしたことがあるし、わからなくなれば同じ制服の人についていけばいい。はやまる気持ちを抑えきれず速足で学校へ向かった。



普通に門をくぐろうとしたら先生と思われる人に止められた。

「みょうじ見えてるで!お笑い成績下がってもええんか!」

「おとん、帰ってたんか!ただいま!」

「オッケー、ええ感じやで!」

なにもおもしろいことできなかったのに、ナイス切り替えと通してもらえることができた。私は元々笑いをとれるようなタイプでもキャラではない。それなのに夢ではちょっと頑張ろうとしている自分が少しおかしい。

そういえば自分の教室はどこかな、と下駄箱で気が付いた。ウロウロしていると後ろから声がかかる。

「なまえおはよ〜」

「お、はよう」

「なんやそれ、はよ教室行くで!」

どうやら同じクラスの子らしく、一緒に教室へ行くことができた。夢だと初めから生徒として認識されてるし、友達もいるし、最高だな〜!むかしの学園ゲームも裏技を使ったら全員と友人から始められたよな〜と呑気に考えていた。

しかし、一つ目の問題が発生した。彼女の後をついてきたものの、自分の席がわからない。よいしょ、と座る彼女にどう聞こうか悩んでいると、不思議そうにされた。

「ん?なに?」

「えへへ!あのさ、その〜」

「宿題なら私もやってへんで!」

「いばるとこちゃうやろ!」

それに、私もってなんやねん!私までやってないみたいやん!

「昨日ドラマ見てそのまま寝てしもたんや〜」

うっかり、と笑う彼女に別の女の子が「いつもやん、ドラマは関係ない」と突っ込んでいた。

「ほんで?」

「あ、うん。私の席って、どこやっけ?」

自分でもアホな質問しているのはわかっているが、他にどう聞いたら良いのかわからなかった。

「なんでやねーん!窓側一番後ろやろー!」

「せやったー!うっかりしてたわー!うふふー!」

「なまえがボケとかめっちゃ違和感」

「うん、あまりせんとくわ」

「ちょっとはするんかい!」

変に思われるだろうか、と不安だったがツッコミからボケにキャラチェンしようとしていると思われただけだった。さすがお笑いの学校である。あれ?お笑いの学校じゃないか、よくわからないけど四天宝寺っぽいなって思いました。まる。



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