2.金ちゃんと知り合う

頑張ろうと決めて今日は朝早くから校門で金ちゃんの登校を待った。登校して来る人達からチラっと見られるのは恥ずかしかったが、今を逃したらもう声をかけられない気がする。

まだか、まだか、そう思いながら待っていると元気良く走ってくる姿が見えた。私は声をかけようと気合いをいれる。大丈夫だと自分に言い聞かせて。

そしてついに金ちゃんが目の前まで来た。

「お、おはよう!」
「おはよう!」

決して大きな声ではなかったが彼の耳には届いたようだ。走る足を止めこちらまで来てくれ満面の笑顔で返してくれた、と思ったらしばしば私の顔を見る。

え、な、なに??
きっと今顔は真っ赤でひきつっているとは思うが、そんなに見られるのは何故?

「ああ!!パンの姉ちゃん!!!」

いきなり大きな声をだし「あの時はほんまおおきに!めっちゃ助かったわ!姉ちゃんもなんか困ったらワイに言うてや!」とまたもや両手をぶんぶん上下にふられる。

あ、そうか。私のことパンの人として覚えていたのか。

「ありがとう、私、みょうじなまえっていうの、よろしくね」
「なまえやな!覚えたで!ほなワイ今からテニスすんねん、またな!ワイの事は金ちゃんって呼んでな!!!」

おずおずと自己紹介をするとさっそく呼んでくれた。後半はほぼ叫びながら手を大きく降りながら去っていってしまった。



おはようを自分で言えたこと、名前を言えたこと、名前で呼ばれたこと、なにもかもが嬉しくて今日は自分なりにテンションが高かった。それに気がついたのはやっぱり隣の彼。

「なんやえらい機嫌良いな」
「え、わ、わかるの?」
「おん、ちょっとだけ口元上がってんで」

恥ずかしくて慌てて両手で口元を隠す。

「なんで隠すねん」
「は、恥ずかしい」
「別にええやん」

それはこのまま笑ってろということなのか、ちらりと彼の方を見るとやはり携帯をいじっており、話はここで終了した。



放課後になり、授業でわからなかったところを質問しに職員室へ入り浸っていたらすっかり遅くなっていた。上履きから靴へ履き替え外に出るとちょうどテニス部のみんなが帰るところだった。

「あ!!!」

と大きな声を出したのは金ちゃんで「なまえ!今帰りなん?!」とかけよってくる。

「うん、帰るよ」
「今なみんなでたこ焼き食べて帰ろう言うててん!なまえもきいや!」
「え、でも、私みんなのこと知らないし……」
「ワイがおるから大丈夫やで!みんなも優しいし!この前のパンのお礼にたこ焼き奢ったるわ!」

こんなやり取りをしている時に他のメンバーが「金ちゃんがたこ焼き奢るとか言いよった」「あいつ先輩を名前で呼び捨てかい」「いやそれよりも金ちゃんに限って、なあ?」「そうかあ、春がきたんやなあ」と色々想像していたらしい。



私の憧れから好きに変わるのも、彼が好きという感情を知るのも、かなり先のおはなし。



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