あれから高校を卒業し大学も卒業し、なんとなく就職して三年がたった今でも光とは仲良く続いている。でも一つ気に入らないことがある。
「なまえ先輩、次はどこ行きます?」
「光〜もう先輩やないしなまえって呼んでよ、あとタメ口で話して!」
「今さら無理っすわ〜」
本当は気にした事なんてなかったんだけど、この前偶然白石と出くわした時に言われた。
いつまで先輩呼びなん、付き合って長いよな。
それを聞いて衝撃を受けた。そう呼ばれるのが私の中では当たり前になっていたけど、言われてみればそうだなって。もう先輩ではないし付き合い長いのに呼び捨てにされないって……なんだか切ない。たまに名前で呼んでって言っても嫌がる。他の事では付き合いたて同様ラブラブなのに。
「特にないなら俺行きたい所あるんで一緒に行きましょう」
こうやって自然と手をつないでくれるところもかわらない。大丈夫、光の愛は伝わってるから。お互いの薬指がそれをあらわしている。だから不安は感じたことがない。それでもなんだか切なくなるのは私だけなのだろうか。
「どこ行くん?」
「つくまで内緒」
あ、この顔、なんか企んでる時の顔だ。でも楽しそうだから私は気がつかないフリをする。ラブストーリーって言ったのにゾンビ物見せられたり、デートスポットって言ったのに心霊スポットだったし、梨だと言って大根食べさせられたし……ろくなことはなかったんだけど、でも本当に楽しそうに笑うから、その顔が見たくてわかっていても自ら騙されにいく。
「ここ……」
ついたのはもう使われていない教会で、手入れされていないから緑が絡まっていて、それが逆に神秘的に感じさせた。
「この前たまたま見つけてん綺麗やろ」
「うん、すごい綺麗」
私が思わず見いっていると横に立っていた光が急にしゃがんだ。
光、どうしたの?
それを発する事はできなかった。
目の前で、しゃがんでいる光の手には、キラリと輝く指輪があったから。
もしかしてもしかして。
「これから先もなまえを愛する事をここに誓います。僕と結婚してください」
この日のために名前で呼ぶのを我慢していただなんて。
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