◇同窓会2

そんなことを鮮明に思い出したのは同窓会のお知らせが届いたからだ。



同窓会はクラス関係なく学年で行ったため人数がすごい。立食のため私はドリンクを片手にちよとウロウロしご飯をとりながら話をする。

「そういや白石とは仲直りしたん?」

「仲直りもなにも、喧嘩すらしてへんよ」

「そうなん?急に関わらんなったからさ」

「ちょっとしたことで気まずくなるお年頃やもん」

「それもせやな!」

なんとか誤魔化して、先生と挨拶などしているとちよは初恋の人を見つけたから行ってくると去っていった。私は一通り挨拶もしたし良い感じにお酒が入っていたためドア付近にある椅子へ腰かけた。

少し休んでいると懐かしい声が私を呼ぶ。

「みょうじ」

「忍足君……」

「久しぶりやな、元気しとったか?」

「まあね」

「さよか、白石も来てるで会うたか?」

「ううん、私はそろそろ帰るし」

「そっか気を付けてや」

あんなに会いたかったのにこの場にいるんだと思うと怖じ気づいてしまう。

会いたいのに会いたくない。

それなりの時間もたったので、忍足君がいなくなってからすぐに二次会への案内アナウンスが流れる。ちよは参加するらしいが私はもう帰ることにした。会場を出ようとすると入り口付近で人だかりができていた。

なんやろ、なにがあったんやろ。

不思議に思い見ようとするが中々見えない。そのまま横目に通り過ぎようとしたら見えてしまった。白石、君や……。相手も私に気がついたようで目がバッチリ合う。

すると人混みから抜け出してきてこそっと「帰るんか?」と聞いてきたのでこくりと頷く。
それを確認した白石君は先ほどの人混みに向かって「このあと共通の知合いの結婚式の打ち合わせやねん、すまんな」と早口に言って私の手をとり早足にその場を去った。

駅前までくると「久しぶりやな」ようやく話しかけてきた。

「せやね」

「元気しとった?」

「うん、白石君は?」

「ぼちぼちやな」

「そっか」

そしてまた黙る。手を繋いだまま駅前で立ちつくす。何か話さないと、あの時のこと謝らないと。そう思うのに言葉が出てこない。話だしたのは白石君だ。

「中学ん時に、俺が相談して協力してもらってたこと覚えとる?」

「うん、全然協力できへんかったよね」

「そんなことないねん」

ううんと首をふる。

「白石君は優しいね」

「あのあとみょうじさんと話せんくなって後悔した」

「あの時は、ごめん」

なんのことを言っているかすぐにわかった。まただ、白石君の顔が見れない。

「俺、情けないけど、まだ……」

その先は聞きたくない、私は遮るように口を開いた。

「ほんま、ごめんね!でも協力なんてしたなかった。やって、うち、白石君が好きやねん」

ようやく白石君の顔を見ると目を見開いていた。

「え、だって、興味なさそうやったし……」

「恥ずかしかってん」

「ほんまに?あ、でも過去形やんな」

はは、恥ずかしいわあと苦笑する白石君。

「私、あれから色んな人と出会ったけど、白石君以上に好きになれる人とは出会えへんかったよ」

緊張のためとぎれとぎれになるが、あの頃伝えられなかった想いを伝える。もう後悔はしたくない。本人を目の前に逃げたくない。さっきまでの怖かった気持ちはもうない。

「あんな、なんか勘違いしてんやろなってずっと思っててん。まあ、俺が悪いんやけど」

白石君は困ったように話す。

「俺が相談してた好きな人ってな、」

手をくいっと引っ張られて顔が白石君の胸板にとんとあたる。

そのまま耳元で「みょうじさんなんやで」と呟かれた。

私はあわててはなれて「うそやん!」叫んだ。

「ほんま、あれしか近づく方法わかれへんかってん」

「でも、過去形、やんな?」

「現在進行形。今日、会いたくて期待して来た。来て、正解やった」

嬉しそうに笑う彼に私は自分のほっぺたを引っ張る。

「あかん、夢なんかな。お酒、飲みすぎたんかも」

「ほな、現実やって確かめてみる?」




そう言うと顔が近づいてきてそっと唇が重なった。



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