よくある話
よくある話。
例えば私が女子高校生だったとする。
胸はお粗末でもそれなりに女らしくなってきた腰回りに、二次元のあの子はまだ中学生のままかぁなんて考えたりする夢女子なる生態だったとする。
あるある、ネットの夢サイトでもよく見る設定。
そんな私が、ある日神様とやらに声を掛けられてしまったり、まぁ、したとして。
ま、これもあるある。よくある話。
夢見る夢子ちゃんな私は、きっとつまらない日常から抜け出したい!とか言いながら、実は内心で萌えを叫びつつ好奇心と興味による知識欲を満たすために、神様とやらの声に耳を傾ける。
よくある話。
本当によくある話だ。
神様に声を掛けられて二次元の世界へ、なんて、いう。
あるあるな序章。
ただし、これはただの、本当によくある話。
現実ではない夢の話。
しかもネット内の。
夢も希望もない、夢の話だ。
現実は違う。
現実では私は三十路一歩手前で、やる事ないから婚活でもしようかなんて考えてて、婚活アプリに保険証の写真を提出して、今はその経過待ち。
現実にも夢や希望はないように思えるが、残念ながらこっちには未来が待っている。
どんな経過を辿るかわからない未来が待っている。
二次元やネット内には、絶対に存在しないものだ。
そして、未来とは。
夢と希望でしか構成されないものである。
画して現実とは、つまりは未来を指すのではないだろうか。
……なんて、考えてる場合じゃあ、ない、みたいで。
現状を自分なりに確認すると、どうやら現実の私も神様に声を掛けられることがあるらしいということがわかった。
少なくとも神様だと名乗る、私ととてもよく似た、少し年下の女性に声を掛けられることがある、ということは確認できた。
ついでに突如光の粒が人型に凝縮して完全に人にしか見えなくなって、いきなり自己紹介をし始めて、神様と名乗り始める自分に似た女性が存在するということも、確認できた。
どんな手段を用いたのかは不明だし彼女の発言の真偽も不明だが、しかし。
私には、そんなことどうでも良かった。
とにかく私は面倒事が好きだったのである。
その理由はわからないが、とりあえず穴があったら確実に覗いてしまうタイプの人間だった。
興味? 好奇心? 知識欲? クソほどどうでもいい。
私はただ、暇だっただけだ。