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朝。鳥の鳴き声と日光できらめく空気中のホコリ。シーツの擦れる音と、隣で眠る小さな3人分の体温。
が、今日は無い。代わりにあるのは、確かな熱量をもった、1人の成人男性の存在感。褐色の肌。艶やかな黒髪。穏やかな寝息と呼応するように揺れる、人には無い背から生えたしっぽ………。
「………ん?」
ん?夢か?何度か目を擦り、目の前の映像が偽物ではないかと見返したが、俺の瞼は再び開く度、今ある現実を確かに映し出していた。
恐る恐る、隣で眠る褐色の青年の頬をつつく。柔らかい。つるつるだった。
左を向いて何もいないシーツを叩き、起き上がって自分の股の下の何もいない空間を手でかき混ぜた。おや、おや?いない?ない?なんで?
遂には白ジュナオがだいたいいつも浮いている天井に向かって腕を上げて手を振り回したが、やはりそこにも何もいなかった。俺が混乱の極みに達した時、ようやくベッドで眠りこけていた青年が「うぅん…」という呻き声とともに、目を擦り体を起こし始めた。
「ふぁ…ますたー、おはようございます…」
「あ、はい、おはようございます」
布団の上で立ったまま天井に向かって腕を上げ固まる俺に、おそらくたぶんジュナオ(大)が朝の挨拶をした。眠たそうだった目を大きく開眼させ、俺の不思議な状態を興味深そうに見つめ首を捻る姿は、正しくジュナオそのものだった。
「おや、これは…」
当の本人も、異変にはすぐ気がついたらしい。縦に伸びた自分の姿を、まじまじと見ていた。俺は布団の上で正座をし、彼の真正面に座る。頭のてっぺんからつま先まで、まんまジュナオの青年版である。よく考えたら、前にもこんなことがあったはずだ。今回も似たようなものだろうと思いたいのだが、さて、それなら、残りのふたりの姿が見えないのは、何故なのだろうか。
「……ふむ、マスター、驚かないでください」
「ごめんそれもう無理かも」
「そうですか」
あまりなんとも思っていなさそうな涼しげな顔でジュナオは頷き目を閉じた。大体予想されていた反応だったんだろう。とりあえず、姿が変わったからとはいえ、俺の事を忘れたりはしていなさそうで安心した。
ジュナオは再び目を開け、緩く口角を上げ笑顔を見せる。これはそれなりに付き合いの長い俺が考えるに、こちらを安心させようとする為の表情だろう。神様みたいだなと思っていたが、こう成長されると殊更神々しく思えてくる。
「マスター」
しっぽを揺らし、ジュナオは体を起こして顔を少し近づけてきた。気圧されて固まってしまっている俺を彼はどう見ているのかは分からないが、まるで母親に褒めてもらいたい子供のような顔で、ジュナオはにっこり笑いながら口を開いた。
「どうやら私たち、成長したようです」
いや、なんか俺の知ってる成長と違う。