ズルいひと2


手の平にキスをされたあの日から、木林さんの事が頭から離れない。そもそも、気になっていた存在の男性だったわけで。あんな事されて意識しない筈が無いのだ。

「名前ー!」

考え事をしていたら、ニヤニヤしている東海林さんに呼ばれてハッと我に返る。危ない、自分の世界に入りすぎてた。

「どうしました?」
「木林さん、呼んでる」

なんて、ニヤニヤしながら東海林さんに言われ、オフィスの入口を見れば木林さんが。後ろで腕を組んでニッコリしているのが、いつも通りなのになんだかこれまでより素敵に見える…。

「どうしました?中堂さんじゃなくて良いんですか?」
「中堂さんでは、困りますね…貴方でなくては」

少し緊張しているけど、務めて表情には出さないように気をつけて尋ねれば、苦笑される。仕事の話じゃないのかな?


「今日はお誘いに上がりました。今夜、もしお時間があれば食事でもどうですか?」

久しぶりに午後から明日まで空いてるんです、なんて、手を取ってまた手の平にちゅ、とキスを落とされる。後ろから東海林さんと三澄さんのキャーーー!!なんていう叫びが聞こえてくるけど、今は気にしない事にしよう…私だって実際内心はキャー!だ。

「え、っと…今夜は予定ない、です」
「では、今夜は名前さんを独り占めしても?」
「あの、ご飯だけですからね」
「…それは残念ですね。まぁ、今日はそれでも良いです。では仕事が終わりましたら、連絡ください」

お迎えに参りますからと続けて言われて、気付いたら連絡先を交換していた。…木林さん、スマートすぎやしない?木林さんが去って、ようやっと緊張が抜けたのか、そのまま近くの壁に背をつけてずるずると座り込んでしまった。途端に、東海林さんと三澄さんが寄ってきた。あの面白がったような表情はきっと、尋問開始だ…。


「ぶふっ なに腰抜かしてんのよ名前。それにしても何よあれ〜!手の平にちゅっ!ねぇ?」
「ねぇ!木林さんって、結構肉食系だったんだ」
「草食に見せかけて、肉食…ロールキャベツ男子!」
「…二人とも異様に盛り上がりすぎです…」