我に帰る









「(やってしまった…)」



明日香は店を出てすぐはムカムカしていて
早足で歩いていたものの
今はしょんぼりしてポツポツと俯いて歩いていた。

それもそうだ。
いつも面倒みてもらっているのに
女として見てもらえないもどかしさが
あの時爆発してそれを含めて保護者面のような
冷たい言い方を言ってしまって
反省を含めて落ち込んでいる。



「(しかも全然追ってこないし、
ついに見放されて今頃合コン開催…!?
いや、三馬鹿ならありえる…!)」



今頃高宮は3つのバーガーと3人前ポテトを
洋平達に早く食えと押し込まれてるなんて
今の明日香には想像できないだろう。

そして帰り道に流川がいつも朝練している
ゴールがある公園まで来て
少し考えるようにそして吸い込まれるように
学校の体育館まで来ていた。



「………」

「あれ?明日香ちゃん!
明日香ちゃんも応援しにいてくれたの?」

「ちがーう!」

「ぬ…?」

「おい桜木!よそ見するな!」

「ふご!!」ドゴッ



ゴリのちっがーうバリに声を発した明日香に
練習に集中していた花道は気付いて顔を逸らしたら
案の定渡ったパスが顔面にクリーンヒットした。



「おい!明日香!お前のせいだぞ!(怒)」

「やめんか!(怒)」



明日香に怒鳴った花道は今度はゴリに拳を下された。



「明日香ちゃん 何かあったの…?」

「洋平と喧嘩した…」

Σ「ええ!?あんなに仲良かったのに!(汗)」

「……」



明日香と洋平が喧嘩したと聞いて
晴子はかなり驚いたが、
明日香が涙目で俯いてる姿を見ると
只事では事に気付いて戸惑った。



「……何があったの?」

「……7・3で洋平が悪い」

「そっか…7・3…」



明日香はファーストフード店であった出来事を
晴子に全て話した。



「それは洋平くんダメよう!」

「だよね!!?」

「明日香ちゃんが辛い思いしたなら
味方でいてくれないと辛いわよね!
それに何その子!図々しいわよ!
女の子がいるのに合コンに誘うなんて!」

Σ「何!?合コン!?」

「集中せんか!!(怒)」



合コンというワードに花道が反応すると
すかさずゴリがキレた。



「明日香!晴子さんに合コンなどという
ふしだらな会食に誘ったりしたら許さねえぞ!!(怒)」

「ふしだらな会食って…(汗)」

「いい加減にせんか!試合に出さねえぞ!!(怒)」



花道はゴリに襟元を掴まれ
強制的に練習に戻された。



「あんた達 恋バナなら声のトーン落としなさいよ!
今皆んなピリピリしてんだから!」

「ご、ごめんなさい彩子さん…!」

「ところで何々?喧嘩したんだって?」



彩子は注意しときながら
興味津々にニヤニヤと明日香に寄ってきた。



「地獄耳…(汗)」

「明日香ちゃん洋平くんと喧嘩したらしくて
原因が明日香ちゃんに失礼な事を言った女の子を
洋平くんが庇っちゃったのよ!」

「あちゃー それは喧嘩勃発だわ。」

「だよね!?アタシがそいつに強めに言い返したら
あんな言い方は無いだろとか言って!
洋平達なんて気に食わない奴いたら殴ってるくせに!
アタシには注意ばっかしてきてさ!(怒)」

「たぶん洋平くんは明日香ちゃんを
心配しての事なんだろうけど…」

「洋平はいつも保護者みたいにアタシを
子供扱いして…世話ばっかしてきて…
アタシだけ嫌いな奴は嫌いだって
素直になっちゃダメみたいなのがムカついて
思わず保護者面すんなとか言って…
アタシを心配しての事なのに
ヒドい事言っちゃったからアタシ…」

「後悔してるのね」

「……後悔してるなら謝ろう!明日香ちゃん!」

「だって気まずい」

「それは私も同じ事経験したわよう!
桜木くんにヒドイ事言って謝らなきゃいけない時
なんであんな事言ったんだろうって後悔したし
気まずくてなかなか言いにいかなかったもの!」

「あー…花道とゴリのパンツずるむけ事件」

「ブッ!(笑)」

「サポートに戻らんか!彩子!!///(怒)」



ゴリも聞こえているらしく
顔を真っ赤にして彩子を呼んだ。

宮城も三井もその試合を見ていないから
何のことか内心めちゃくちゃ気になった。



「でも…どんな顔で合わせれば…」

「洋平くんならどんな明日香ちゃんでも
許してくれるわよ。だって優しいもの。」

「むぅ…」

「(スネてて可愛い…///)」



晴子は縮こまって悩んでいる明日香に
思わずキュンとしてしまった。



「明日香!」

「!」



声がして振り返ると
走ってきたのか息を荒くして
洋平とその後ろに大楠と野間がいた。
大宮は恐らくデブだから遅れてるのだろう。



「やっぱりここにいたか…」

「なんで…」

「今日晴子ちゃんと会って
練習応援しに行くって聞いてたから
多分と思ったんだよ。
そしたらホントにいてビックリだ(笑)」



洋平はそう言ってニカッと笑顔だったから
その笑顔が眩しくて明日香はソッポ向いた。



「まだスネてるのか?明日香。
さっきのは俺も悪かったよ。
俺だって喧嘩っ早いのにお前は女だからって
喧嘩とかそういうのさせたくなくて
こういうところが過保護って言われんのな。」

「……さっきの子と合コン約束した?」

「しねーよ」

「でもバイト先で仲良くするんでしょ?」

「それは…バイトだから仕方ねえだろ」

「私はそれも嫌。私が嫌いな子と
洋平が仲良くするのが嫌…なの…」



珍しく直球に自分の気持ちを伝える明日香に
隣で見ていた晴子は顔を赤くして
大楠と野間もキョトンとした顔で驚いていた。
そしてその後ろでやっと追いついた大宮は
状況が読めずに息を荒くして整えていた。

然し洋平はまたしても気付いていないようで
まるで子どものワガママを聞いてあげているような
表情で少しため息を吐いた。



「ハァ…明日香…」

「っ……(洋平ため息ついてる…)」

「ふぬー!!!!!!(怒)
人が汗水流して練習してる時に
気が散る!!出てけ暇人共!!!!
あ、晴子さんは勿論居続けて応援してくださいね///」

「な、何よ!花道のくせに!!(怒)」

「それに関しては許す(汗)」



体育館外とはいえ目に見える場所で痴話喧嘩は
さすがのゴリも気が散ってしかなかったらしく
珍しく花道の強引な追い出しに賛成だった。

明日香と洋平ほか3馬鹿は投げ捨てられるように
学校から追い出されてしまった。



「やれやれ…花道にしてはまともだったな(笑)」

「「「うんうん」」」

「な、何よ 三馬鹿のくせに…!」

「明日香は我儘なんだよ。」

「そうだそうだ 洋平の事も考えろ」

「お前の言い分だと
お前が気に食わない奴が現れる度に
洋平はバイトを変えなきゃいけなくなるぞ」

「そのうちバイト先が遠ざって
俺らと遊ぶ時間が無くなったらどーすんだ」

「そーだそーだ」

「そ、それは……(汗)」



花道のおかげ?で少し空気が軽くなったからか
三馬鹿がぐいぐいと明日香に詰め寄って
先ほどの険悪ムードは和らいで
三馬鹿の詰め寄りに明日香は戸惑っていた。



「まーまー、要するに仲良くしなきゃ良いんだろ?
全く会話しないのは難しいけどよ。
関係ねー事はなるべく無視するようにするよ。」

「……ほんと?」

「ああ。それなら良いだろ?」

「……うん」

「これが限界だ(笑)」

「ありがと 洋平…」

「お前に悲しい思いさせたくねえからな」



洋平がニカッと笑いながら
明日香の頭に手を置いてくしゃくしゃと撫でた。
本当はぶっ倒れそうなくらい胸がキュンとして
明日香は俯いて顔が真っ赤なのを隠した。

自分の我儘を平気で聞いてくれる。
こんな優しい人は世界で一人しか居ないと思った。

でも洋平はさっきの明日香の言葉は
自分だけ特別な事だとちゃんと理解出来てなかった。
二人の進展はまだ遠い。














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