君の願い
▽
「エマまだー?」
「もうちょっと!」
「適当にポニーテールで良いのに…」
「ダメ!新年くらい気合い入れないと!」
「女の子って大変だね」
「瀬里奈も女でしょ!」
大晦日 瀬里奈は着物をレンタルして着付けて貰い、
今はエマの部屋でヘアセットをやってもらっていた。
エマは元から癖毛でフワフワした可愛らしい髪質だが
瀬里奈は直毛の為 ただのポニーテールだと
シンプルすぎてしまうからエマが一生懸命
編み込みをして前髪も顔が見えるようにコテで巻いた。
「出来た!」
「ありがとう エマ器用だね。
マイキー部屋で待ってるから行こ。」
「うん!」
二人は首元にファーを付けて
マイキーの部屋に向かった。
ガチャッ
「お待たせー」
「おせーよ。もう行かないと遅れんぞ。」
マイキーの部屋にはドラケンも来ていて
二人も着物を着て待っていた。
髪型はいつもと変わらずドラケンはヘアセットしていて
マイキーはおでこを出して束ねていた。
エマはビビットなピンクの華やかな振袖で
瀬里奈は紺色に鮮やかな花が散りばめられた振袖を着て
丁寧にヘアセットが造り込まれていた。
「ドラケン!他に言うこと無いの!?」
「あ?着物だろ?新年らしいじゃねェか。」
「もっと別の言葉!」
エマとドラケンが言い合っていると
マイキーが瀬里奈の元に歩み寄って
ジッと下から上まで眺めていた。
「変?マイキー」
「ううん。綺麗。」
マイキーが綺麗だと言うと
エマが「マイキーは言えてるのに!」なんて
ドラケンにプンプン怒っていると
「お前も似合ってるよ」と
素っ気なく困ったように言っていた。
「着物は綺麗なの見せれて良かった。」
去年の夏 浴衣を着た時は雨や土で汚くなって
しかも裸足でボロボロだったからと
瀬里奈が振り返ると
マイキーは優しい表情で瀬里奈の手を握った。
「ほら 行こう!」
そう言ってただの少年のように瀬里奈の手を引いて
渋谷で大きめな神社に初詣に向かった。
神社は入り口前までも人が多くて
流れるように中に入って行った。
来るのが遅れたから後10後には年越しだ。
今年は色んな事があり過ぎた。
タケミっちと出逢ってパーが居なくなって
ドラケンが死に掛けて稀咲が入ってきて
場地が死んで一虎は捕まって
タケミっちが壱番隊隊長になった。
そして黒龍をまた倒した。
マイキーにとっては濃すぎる一年だから、
瀬里奈は振り返る言葉を掛けるのはしなかった。
歳を越したら次はどうなるのか。
それだけを考えて参拝まで足を進める。
コツンッ
「ん?」
「絵馬だ。誰のだろ。」
マイキーの足元に絵馬が転がってきて
それを拾うと裏面を見た。
"みんなも救えるヒーローになれますように"
パッと文字が目に入った瞬間、
「待ってー!俺の絵馬あああ!!(汗)」
「俺のエマ?(汗)」
「へ?」
なんか騒がしいなと思ってたら
タケミっちが慌てて走ってきて
俺の絵馬がなんて叫ぶから
エマが怖い顔をして振り返った。
「俺のエマって何よ?」
「おっ タケミっち」
「俺のエマってコレ?」
「あーーーー!!返して下さい!(汗)」
「うん 必死だね。ハイ 落ちてたんだよ。」
マイキーが絵馬をタケミっちに返した瞬間
ワァ!と周りが騒がしくなって
いよいよ年越しのカウントダウンが始まった。
そしていつの間にか東卍の隊長達や千冬
八戒や柚葉にヒナと三ツ谷の妹達まで集まった。
「よーし!皆んな飛ぶぞぉ!」
「え?え?(汗)」
するとマイキーは瀬里奈の手を握った。
そして年越しの瞬間 タケミっち以外の全員が
両手を上にして空中で歳を越した。
「タケミっち飛んでねーだろ」
「ほんと鈍臭いなタケミっちは。」
「だ、だって急に…!あー!また絵馬が!!(汗)」
「エマエマうるさい!タケミっち!(怒)」
タケミっちを中心に騒いで笑い声が聞こえて
賑やかな年越しに瀬里奈はいつもの表情で
皆んなが笑っている様子を見ていると
キュッと繋がれていた手に力が入って
マイキーの方を見ると穏やかな表情だった。
「お参りしよう 瀬里奈」
「うん」
二人はお参りに並んでお賽銭をして
二人で鐘を鳴らしてお祈りをした。
そして皆んなが終わるまで端にずれて待つ事にした。
「何祈ったの?瀬里奈」
「マイキーの夢が叶いますようにって言ったよ。」
「自分の事じゃねーの?」
「うん。アタシは夢とか無いから。
マイキーは夢の事お願いしたの?」
「……俺は皆んなと走り続けたいって言った。
夢を諦めたわけじゃねェけど、
東卍は変わり過ぎた…から、正す事にする。」
マイキーの言った意味がなんと無く分かった。
黒龍の事は直接は知らないけれど、
稀咲が仕組んだ事なのは分かっている。
たぶん、それが良くない事なんだって
マイキーは東卍の皆んなの為に選ぶ。
夢から遠くなったとしても
自分の仲間が側に居て欲しい。
その気持ちと自分の中にある
別の心が混じり合わず分離する。
瀬里奈はそんなマイキーの奥を知っている。
「うん…マイキーがそうしたいならそうしなよ。」
君が決めた事なら何も言わない。
瀬里奈はいつも肯定した。
ーーーーーー…*°
「これより新年一発目!
東京卍會全体集会を始める!」
三ヶ日 正月を過ごした東卍は武蔵神社に集まった。
「東卍と黒龍は対立してきた。
一度は和平協定を結ばれたが破綻。
それは兄弟である弐番隊副隊長と
黒龍総長の確執が原因だった。
そして東卍は聖夜に黒龍とぶつかり、激戦の末 勝利した。
この件の事で皆んなの前で話したい奴が3人いる!
一人目!!柴 八戒 前へ!!」
ドラケンが呼ぶと八戒が皆んなの前に立った。
「始まりは俺のくだらねェちっちぇ嘘だった。
そのちっちぇ嘘を守る為に俺は家族を…東卍を巻き込んだ。
そして事はデカくなり、東卍対黒龍の抗争まで発展した。
全て俺の責任だ。………皆んな、すまなかった。」
八戒は皆んなの前で深くお辞儀をして謝った。
すると伍番隊隊長やし肆番隊隊長が声をあげ、
さらに東卍隊員皆んなが声を上げて、
弐番隊隊長である三ツ谷も声を上げた。
「八戒!!お前はこれからも
東京卍會弐番隊副隊長だ!!
皆んなもそれでいいよな!?」
「「「「おおおお!!!!」」」」
八戒は弐番隊副隊長として残れる事になり、
そんな八戒を救えた事だけでも
タケミっちと千冬は嬉しくなった。
「さて!二人目は!!乾!!前へ!!」
乾 青宗と九井一は皆んなの前へ立ち、
黒龍十一代目と名乗った。
東卍は何故黒龍が出てくるのがザワつくと
さらに驚く事を口にした。
「十代目黒龍は東卍に負けた。
総長である柴大寿は引退。
俺らは十一代目として総長を継いだ。」
「………そしてマイキーと話し合った結果、
東卍の傘下に降る事にした!」
「黒龍は壱番隊 つまり花垣武道の下につく!!」
マイキーから言われタケミっちは大声で驚いた。
周りもザワザワとするのも当然だ。
壱番隊が一気に人数が多い隊になるから。
そして何故喧嘩に弱いタケミっちなのか。
「いいな?タケミっち。」
「あ…あぁ…(汗) 黒龍が俺の下につく…?
なんで……それは一体誰の判断なんすか!?」
「"東卍に降るならお前の下につきたい…"
それが黒龍(こいつら)の意志だ。」
イヌピーとココはタケミっちの前までくる。
千冬もタケミっちも裏があると
黒龍の事をもちろん信用する事は出来なかった。
「よろしくな!隊長!」
「……いきなり信じろとは言わねェ。
力が必要な時は言え。手を貸す。」
そして三人目
「この聖夜(クリスマス)決戦を踏まえて、
最後に話したいのは俺だ。」
マイキーが前に出ると
騒いでいた皆んなは一気に鎮まり
ゴクリと唾を飲んで次の言葉を待った。
「………マイキー君?」
「稀咲鉄太!」
「はい!!」
"お前を除名(クビ)にする"
冷たく重い言葉を通告した。
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