落ちる雪
▽
「寒っ!」
「今年はホワイトクリスマスだねー」
クリスマスの夜
瀬里奈はエマと神社に向かっていた。
真一郎が毎年クリスマスに祈りに来ていたから
瀬里奈もエマに誘われて来るようになっていた。
どうしてクリスマスに神社に来るのかは知らない。
そして何を祈っていたから知らない。
瀬里奈はたった一年と少ししか
真一郎と過ごせなかったから知らない事が多い。
気付いたらマイキーとの時間の方が
あっという間に過ぎてしまった。
瀬里奈にとって真一郎は特別なモノなのに
過ごせた時間が少ない事が寂しくなる時がある。
「あれ?誰かいる…」
エマが神社で先客がいる事に気付くと
直ぐに誰か分かった。
「クリスマスに神社でお参りする奴いる?」
Σ「!、え?エマちゃん!?」
「やっぱりヒナか。」
「それに瀬里奈さんも…」
お参りに来ていたのはヒナで
3人は近くのベンチに座った。
「2人はどうして…」
「ウチらもお参りに来たんだよ」
「え!?エマちゃん達も!?」
「うん。上の兄貴が毎年クリスマスに
ここにお参りしに来ててさ。変な奴でしょ?
それについて行ったら毎年の行事みたいになっちゃって」
「えー!!すごい偶然!
ヒナも毎年クリスマスにこの神社に来てる!」
「ウッソ!!ここにも変わり者!(汗)」
「へー じゃあさ、ウチらもっと
ずーっと前から出逢ってたのかもね」
「ふふ 確かに!」
「…で?何お祈りしてたの?」
エマが聞くとヒナの表情が曇った。
そしてゆっくり話を聞くと
ヒナの父親がタケミっちと付き合っている事を知って
不良と付き合うのに反対したらしく
タケミっちに直接別れて欲しいと言ったらしい。
ヒナを守る為だと言って。
「…なるほどねー アンタの親が出てきたかー
それはタケミっち的にはしんどいね…」
「ウン…」
「でも、親に言われたからって…。
よし!この件はウチに任せな!」
「え?」
エマが男前な事を言ってスクッと立ち上がると
携帯を取り出して電話をかけ始めた。
そして電話の相手はドラケンだと直ぐに分かった。
ドラケンはマイキーとバイクで走ってるはずだから
たぶんマイキーも一緒だろう。
瀬里奈は飴を取り出してラムネ味を口に入れ、
不安そうにエマを見るヒナを見た。
好きになったのが不良だからと別れさすのは親のエゴだ。
子どもの事が大事だと言って自分の所有物を
自由にせず心なんて関係ないかのように決め付ける。
どこの良い親でもそうなのかと瀬里奈は思ったが
それでもその中には愛情があるのも分かってる。
愛されているんだなと、それだけだった。
「タケミっち絶対連れて来てね!
ヒナん家の前で合流ね!」
そう言ってエマは電話を切った。
「ドラケン探してくれるって?」
「マイキーがあてがあるっぽい
よし!行くよヒナ!」
Σ「え!?待ってよ!!タケミチ君に会うの!?」
エマはヒナの手を取って歩き出した。
「何!?好きなんでしょ?
ウジウジしない!!言いたい事伝えな!!」
「でもっ、………今タケミチ君にあったら
何も言えない…泣いちゃうかも……っ」
ヒナはそう言って涙目になっていた。
「大丈夫だよ ヒナ。」
「え…」
「タケミっちはヒナの事 ちゃんと好きだよ。」
瀬里奈はそう言ってヒナに笑顔を向けた。
ーーーーーー…*°
ヒナのマンションの前で待っていると
雪は止んでいて地面にふかふかと積もっていた。
「…マイキー来た。」
遠くからCB250T(バブ)の音がして瀬里奈が気付くと
マイキーとその後ろにタケミっちが乗っていて
瀬里奈とエマそしてヒナの所に来て止まって
タケミっちも状況が分かっていない様子で
どういう事かマイキーに聞いても知るはずがなかった。
「……またケンカ?」
先に口を開いたのはヒナだった。
抗争なんて話聞いてなかったのに
タケミっちは顔も全部ボロボロだった。
でも、ヒナの前に立ったタケミっちは
喧嘩の傷とかでは無く、
泣き出して顔がぐしゃぐしゃに崩れた。
「ヒナあぁあ ごめん!!!(泣)
俺…不良だし…お父さんの言うこと分かるし…
もし俺のせいでヒナに何かあったらダメじゃん!
俺 救うって誓ったのに…」
「……?救う…?」
「ヒナぁあ 絶対守るから…!!
たとえ…君が死んでも」
「え?何…言ってるの…?タケミチ君(汗)」
オーバーな言葉にヒナが戸惑っていても
タケミっちは話すのが止められなかった。
「トラックで轢かれても…足の感覚なくなっても…
何度でも…守るから!!別れるのは
ナシにしてくんねェかなぁぁ?(泣)」
地面に膝付いて泣きながら話すタケミっちに
ヒナも思わず目が潤んでそれをグッと堪えた。
「初詣」
「……え?」
「連れてって。」
「……え?それって…じゃあ、」
「仲直り」
ヒナはそう言って笑顔を見せた。
それを見てタケミっちはまた顔をぐしゃっと崩した。
「ヒナぁぁぁ(泣)」
「ホラもー泣かないでよっ」
「だってよぉぉぉ(泣)」
「ちょっとー」
それを見ていた瀬里奈達もホッとする。
「良かったねーヒナぁぁ(泣)」
「…なんでエマが泣いてんの?」
「………女に弱くて、喧嘩も弱くて、
でもいざっていう時は頼りになる。」
「……」
「ホント"あの人"みてェだな。タケミっちは!」
「……ああ!」
ドラケンがそういうと、マイキーは笑ってた。
「タケミっち!!ちょっと一緒に走ろうよ。」
マイキーはそう言ってタケミっちの手を取って
バブに乗って走って行ってしまった。
それを見送った瀬里奈は出口へと歩き出した。
「瀬里奈 帰んのか?
マイキーこっち戻って来るんだろ。」
「ずっと外で待ってたら流石に皆んな風邪引くよ。
今日は自分ん家帰るし、マイキーには連絡しとくから。」
「瀬里奈 今日はありがとね!」
「瀬里奈さん!」
瀬里奈が帰ろうとするとヒナが駆け寄った。
「瀬里奈さん 今日はありがとう
瀬里奈さんのいう通りだった…
タケミチ君 あんなに泣いてヒナの事…」
「トラックのくだりは謎だったけどね。」
「うん…ヒナもびっくりしちゃった…まるで…」
「そんな未来を見たかのような言い方だったね。」
「!…うん。」
「でも、良かったね。
そんな未来からタケミっちが守ってくれるよ。」
瀬里奈はヒナにそう言うと
自分は雪道を歩いて自分の家に向かった。
家の近くまで来るとイヌピーが立っていた。
「……マイキーと一緒だったらどうするの?」
「理由なんてどうとでも出来る。」
「…入りなよ。マイキー今走ってるから
一緒にいるとこ見られるかも。」
瀬里奈がそう言って先にアパートの階段を上がると、
「黒龍は終わった。」
「うん。詳しくは知らないけど、
タケミっち酷い怪我してた。
マイキーも口切れてたし。」
「花垣武道は何者だ?」
「……」
その質問に瀬里奈は答えず
アパートの鍵を開けて中に入り、
イヌピーも続けて中に入った。
「タケミっちは…真一郎みたいだって
マイキーは言ってるよ。」
「……」
「弱いクセに助けようとしてくれる所が似てる。
他人の為に命張れる人なんだと思う。」
「………黒龍は花垣武道について行こうと思う。」
「東卍じゃなくて?」
「引き抜くわけじゃない。
壱番隊の傘下に入って黒龍と兼用にして貰う。」
「…それはアタシじゃなくマイキーに言うべきだよ。」
「東卍は汚ェやり方はしない。
だから瀬里奈。ココとはもう切って欲しい。」
イヌピーがそう言うと、
瀬里奈はやかんをコンロに置いて火を付けた。
「良いよ。」
「…ありがとう。」
「ココがそれを望むなら。」
「!」
「お金が必要で求めて来たのはココだよ。
だから紹介してあげたのに、イヌピーが勝手に止めたら
ココが必要としてたもの奪う事になる。」
「もう必要無いんだ。
それでもココは続けてるだけで…」
「ココの気持ちはどうするの?」
「……」
「頑張る理由…それをイヌピーが奪うの?」
「…マイキーに知られても良いのか?」
「…良いよ。それで捨てられるなら
アタシはそれで良いと思ってるから。
マイキーが置いてくれるなら側にいるだけ。」
マイキーが嫌いな事をしているって分かってる。
でも自分にはそれしか無いから
それを拒絶されて嫌われて捨てられるなら
それでも良いと思っている。
だから捨てられない限り側にいる。
止めろって言われても自分は抜け出せない。
「マイキーが嫌いな事してるって分かってて
でもこれしか出来ないから続けてるだけ…
親父が出てきても居場所を無くす為に…」
皆んなが過去に縛られ続けて生きている中、
瀬里奈もまた過去に縛られている一人だった。
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