華のような











ーーー… フォー、お母様は?







ーーー…お父様は?







ーー… わるい ユィ







ーーー… ………。








私の両親はすぐに亡くなった。








それは呪縛。








だから私も呪いをかける事にするの。








大切な人が私の前から消えませんように。













ーーーー……*°





トントンッ
「ユィ」

「!、バク兄様っ」



世界の終焉を阻止するためヴァチカンの命によって設立された直属の対AKUMA軍事機関 黒の教団 アジア支部。科学班や探索班など各班に分かれており その中でチャン家の末裔で最年少である ユィ・メイ・チャンは アジア支部誇る薬剤師であった。

アジア支部支部長のバク・チャンは従兄にあたり 実の兄のように慕っていた。ユィは生まれつき耳が聞こえない。だからそれを知っているものは初めに声をかける時に肩を2回叩いている。ユィはバクだと気付くとパアッと顔が明るくなった。その表情を見るとバクは鼻を押さえてうずくまり 震える。



「ば、バク兄様 じんましんですか!?(汗)」

「バク様ーー!!!(汗)」

「だ、大丈夫だ ユィ…それより話が…!///」



バクは可愛い妹の笑顔に弱く興奮してじんましんが起こる。さらにあまりの可愛さに鼻血が出そうになり鼻を抑える。その度に支部長補佐 サモ・ハン・ウォンが看病していた。

バクはウォンにお姫様抱っこされて支部長室に運ばれ ユィはその後をついて行った。支部長室ではベットに横たわり辛そうにするバク(命に全く別状なし) にユィは椅子に腰掛けてそれを見守っていた。


「ゅ…ユィ…」

「ユィ様 バク様がお呼びです」

「はいっ 治りましたか?」

「君には10日後 黒の教団総本部に向かってもらう」

「………え?」

「コムイからの要請だ。医療班として君の漢方の技術で多くの人を救って欲しいそうだ」

「……やだ」

「何!!?(汗)」

「やだやだやだ!」

「な、何を言うか!支部で働く者は皆 本部で働く事を強く思う者もいるのだぞ!!って 目を塞ぐな!私の口を見ろ!!(怒)」

「……」

「ユィ様…(汗)」


ユィは話し合うのを拒否して目を閉じた。耳が聞こえない為 これだけでシャットダウンする事が出来る。バクは身体を起こしてユィに話を聞かせようとするが全く聞く目を取らない。


「ユィ お前…!(汗)」

「〜〜〜総本部なんか行くもんか!!(怒)」ダッ!

「あ!こらユィ!!(汗)」


ダダダダ!!ドテッ ガッシャーン!!!!

「………(嫌な予感…(汗))」

「ゆ、ユィ様……?(汗)」

ダダダダ!!!!

「ユィ様ー!!!!(汗)」

「ひいいい!中国国宝の壺ー!!!(汗)」



ユィは出て行った時に室長室出入り口のすぐ横にある国宝の壺(1億万ギニー)を転んだ拍子に落として割って走り去って行った。












「はあ…!はあ……!!」








嫌だった。








呪いをかけたんだ。







なのに離れなきゃ行けないなんて絶対嫌だ。







ダダダダ!!

「!、ユィさん!?(汗)」

「なんかめっちゃ急いでたけど…(汗)」

「そういえばユィさん 教団本部移動らしいよ」

「「え!!?(汗)」」

「それと関係してるのかもね」

「そうだったんだ…(汗)」

「蝋花!李佳!シィフ!ユィ見なかったか!!(汗)」

「バク支部長!(汗)」

「ユィさんならさっきダッシュで向こうに…」

「ユィ!あの壺国宝だぞ国宝ー!!!(怒)」ダダダダ!


血相変えてバクが科学班の3人の前を走り過ぎていく様を見て 本部移動に関係ないんじゃないかと思った。







ユィは疲れ切って 自分の職場である漢方薬調合室に鍵を掛けて篭った。扉に背を向けてしゃがみこむ。どうしても此処を離れたくないのだ。また自分がいない時に誰かが居なくなってしまうんじゃないかって思ってしまう。


嫌だ。もう居なくなるのは。








トントンッ
「……フォー…」







しばらく俯いてジッとしていると 肩を2回叩かれ顔を上げた。アジア支部の守護神であるフォーは優しい顔をしてユィと同じ目線でしゃがんで見ていた。ユィはフォーの口元を見ると バクが心配している と言っていた。ユィはまた目を俯いてしまう。だが会話をするのに相手の顔を見なくてはならない為 また顔を見る。



「……本部移動になるんだって…」

「ああ」

「此処を出たくないよ」

「大丈夫だって。めっちゃ弱いけどバクだってやわじゃねえし、ズゥ爺っ様だってお前がいない時に勝手にいなくならねえよ」

「……嫌だ。あの日から御呪いかけたんだ」

「御呪い?」

「……大切な人が私から消えませんようにって…」

「……ユィ…」

「だから嫌だ。フォーみたいにずっと此処いる」

「……はあ…お前なあ」ガチャ

「あ!!(汗)」

バンッ!!
「ユィ!!(汗)」



フォーは勝手に内鍵を開けてしまった。開いたのが分かったが扉は開かれ 寄りかかっていたユィは後ろにぐるんっと倒れて 見下ろすバクを見上げた。その後ろのサモは目に涙を浮かべている。いつから此処に来ていたのか、耳が聞こえないユィには分からない事だった。



「……バク兄様…」

「アホ!鍵まで掛けたら何かあった時困るだろう!!(怒)」

「う…」


バクの正論に確かにと思い ユィは申し訳ない気持ちになった。声量は聞こえないから分からないけれど表情からして相当怒っているのはよく分かる。



「そんな怒んなよ バク ユィだって反省してんだろ」

「どうしてフォーは俺様には厳しくてユィには甘いんだお前は!!(怒)」

「お前はアホだからだ」

「俺様は支部長だぞ!(怒)」

「アタシは守護神だっつーの」

「(2人の喧嘩になっちゃった…)」

「ユィ様 お腹を空かせておりませんか?ユィ様の大好きな中華粥をズゥ爺っ様に作って頂いてますよ」

「ズゥ爺っ様…」


ユィの曾祖父であるズゥ・メイ・チャンは料理長だった。中華粥が大好きなユィはズゥのお粥が一番大好きだ。それも食べれなくなってしまうと思うと余計寂しくなる。



「今日は本部のお話は止めて ゆっくり休みましょう」

「……うん」







ユィはウォンの言葉にコクリとうなづいた。その横ではバクとフォーが喧嘩して バクが泣かされていた。こんなに楽しい場所から離れろっていう人たちが嫌いだと思ったユィだった。