想い人








ゴリゴリゴリ…
「ユィ…」

ゴリゴリゴリ…
「おい ユィ」

ゴリゴリゴリ…
「こっち見ろ ユィ」

ゴリゴリゴリ…
「私の顔を見ないか!ユィ・メイ・チャン!(怒)」



あれから3日ユィはバクから総本部移動の話を振られるたびにシャットダウンする事にした。誰に似たのかかなりの頑固で、いつも笑顔で "バク様!"と話しかける彼女は3日見ていなかった。可愛い妹が自分に反抗してくる事がバクは何よりも辛かった。そしてそれは黒の教団本部室長コムイ・リーにも降りかかる。








 

「全然ダメだ。全く聞く耳をもたん」

『えーそこを説得させてよーバクちゃん』

「バクちゃんと呼ぶな!(怒) 第一ユィはまだ14歳だぞ!耳が聞こえなければそっちに移動する最中AKUMAにでも出くわしたらどうする!!」

『だからー 途中からエクソシストが迎えに来るってばー』

Σ「なに!?(汗)」

『まだ誰にするかは決まってないけど 必ず行かせるから。それに僕だってユィちゃんに辛い思いさせたくないから上と話し合おうとしたんだけど 全く聞く耳を持たないんだ』

「くっ…!中央庁め……!(汗)」

『君たちで出来れば説得してもらいたい。じゃないと上が強引に動くかもしれないんだ。』

「どうしてそこまでユィに…(汗)」

『怪我人がかなり多くて皆んな完治しないまま 次の任務に行く事が多い それによってか 死者も近年かなり増えて来ている。医療班増員は全体的に行われているんだよ。それにユィちゃんは科学班としても活躍して貰おうと思ってる。だからお願いだ。ユィちゃんの力が必要なんだよ。』

「……その胸を伝えてみよう」

『うん 僕も妹が離れる寂しさは良く身に染みてるよ』


「……コムイ…」

『じゃあ バクちゃんお願いねー!』

「バクちゃんと呼『ガチャン!ツーツー…』〜〜!!!(怒)」



バクは黒の教団総本部 コムイ室長と電話をして向こうの事情と中央庁の動きを知り ユィにはもう行かせなければならないと思った。何より中央庁が動き出し 強引にともなればユィが辛くなるだけなのだ。



「ウォン」

「はい バク様」

「ユィを呼んできてくれ」














ーーーーーー…*°




ユィはウォンに呼ばれ 支部長室に来た。テーブルにバクとユィで向かい合わせに座り 中華菓子とユィの好きな茉莉花茶が用意されていた。だがバクは怖い顔をしている。


「ユィ ちゃんと話をしよう。お前の思いも勿論大切に思っている。私もお前の事が大切なのだ。」



ユィは眉間に皺を寄せて 辛そうな表情をする。



「……わたしだって…バク兄様を困らせたくないよ…でも アジア支部の皆んなが大好きなの…」

「ユィ…」

「離れたくない…」

「ユィ お前が承諾しなければ中央庁が強引に連れて行く事になる」

「え…(中央庁…?)」

「そんな離れ方は嫌だろう。私も辛い。」

「バク兄様…」

「いつAKUMAが現れるか分からない状態で難聴の君が旅に出るのは不安だろう。旅の途中エクソシストが迎えに来るそうだ。だから安心して…」

「……どうしてエクソシストでもないのに…」

「……ユィ。我々の目的は千年伯爵による世界の終焉を阻止する為の対AKUMA軍事機関として設立されたのだ。その為にお前の力が必要だと中央庁が言ってる事をよく理解しなさい。」

「ッ……」

「命懸けで戦ってきたエクソシストを治療するのがお前の役目だ。それでも承諾しないというのなら 強引にでも連れて行く。」

「兄様…」



ユィはずっとバクの表情を見て話を聞いていたのだが 真剣な顔して淡々と話す姿を見ていたが 最後に酷く辛い表情をしていた。そんな顔されたらこれ以上我儘が言えるわけがなかった。ユィは辛そうに俯いて 涙を堪えた。泣いたらまた彼を傷付けると思って。



「……分かった。」

「!、本当か ユィ!(汗)」

「もう兄様を困らせたくないもん…」

「ユィ様…!!(泣)」

「ユィ…!」

「チャン家に恥じない働きを示します」



ユィは十分理解をしていた。ずっとバクの背中を見ていたから 黒の教団の事で苦しむ顔も見てきた。そんな兄を目の前にして自分も楽してはいけないのだ。求められれば答えなくては皆んな力になりたいから親から離れて此処にいるのだから。

ユィはゆっくり席を立って 仕事に戻るね と伝えて部屋を出て行った。その表情は酷く寂しく悲しかった。別れは誰だって辛いもの。でも死ぬわけではない。この別れはいつか必ず会えるものだ。









「ユィ」

「!、フォー…」

「大人になったな」

「……3日間も我儘通すなんてまだまだ子どもだよ」



目の前に現れたフォーに対し ユィは苦笑いをした。



「バクやズゥ爺っ様が死んじまわねえようにいるのがアタシだ 安心して行ってこいよ」

「…わたしにとっては フォーも大切な人だもん」

「、ぷ…はははっ!ありがとうな ユィ」ポンポンッ

「うん」



フォーは嬉しそうに笑い ユィの頭をポンポンッと手を乗せた。ユィも心は少しだけ晴れる。そして黒の教団総本部への出発は残り7日間となった。